Column/コラム

質問応答記録書の「押印」は 行政指導というフェイクニュース

質問応答記録書の「押印」は 行政指導というフェイクニュース

質問応答記録書の「押印」は 行政指導というフェイクニュース

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百八回目。

テーマは、

「質問応答記録書の「押印」は
行政指導というフェイクニュース」

です。

税務調査で書面など、決定的な証拠が
乏しい問題が発見された場合、
税務署は事実関係を
正確に把握するために
「質問応答記録書」
という書類を作成します。

これは、刑事事件の取調調書に
類似した書類で、社長などの調査対象者に
ヒアリングした内容を、
質疑応答形式でまとめる書類です。

言い換えれば、
このような書類を作ることで
ヒアリング内容を証拠書類とし、
証拠に乏しい状況にもかかわらず、
今後の課税処分で証拠として
活かすことを税務署は目的としています。

この質問応答記録書の
証拠性を高めるために、
税務署の調査官は、
ヒアリングをする対象者に自分が記録した
内容に誤りがないか確認してもらった上で、
「事実関係に相違がない」
旨の押印を求めることになっています。

ここで重要なのがこの「押印」で、
数多の裁判例でも指摘されている通り
押印があれば、
質問応答記録書の証拠能力が
飛躍的に大きくなります。
このため、質問応答記録書の対応方法として
「押印は拒否できるのだから、
押印してはいけない」と、
実際に実施できているかは分かりませんが、
多くの税理士が解説しています。

話を戻しますが、
押印を「拒否できる」というニュアンスで
誤解しがちなのが、
税務調査と「行政指導」との違いについてです。

本連載でも指摘しましたが、
税務調査は拒否できないが、
行政指導は拒否できると言われます。

行政指導の典型例は
「~について問題があると想定されますので、
確認の上税務署の担当者までご連絡ください」
といった、税務署からのお尋ね文書ですが、
これには回答する義務はありません。
先の文言にもあります通り、
行政指導は「ご連絡ください」といった
行政のお願いに過ぎないからです。

一方で、税務調査は納税者が
応じる義務があるものですから、
それを拒否するのは違法です。

このような相違が
あることはよく知られていますが、
とある自称税務調査の専門家が、
拒否できる質問応答記録書の「押印」も
行政指導である、と指摘していました。

確かに、
拒否できるという側面は同じですが、
この理解は誤っていると考えられます。
と言いますのも、
質問応答記録書について書かれた
国税の内規には、
「質問応答記録書は、調査関係事務において
必要がある場合に、
質問検査等の一環として~作成する
行政文書である」
と解説されているからです。

注目いただきたいのは
「質問検査等」という用語で、
税務調査で必要となる事項について、
調査官が調査対象者に
ヒアリングしたり資料を
確認したりすることを法律的に
「質問検査等」といい、
納税者がそれを拒否すると
違法とされています。

質問検査等の一環である以上、
質問応答記録書の作成を納税者は
拒否できないと考えられます。
一方で、押印まで義務付けるのは
任意調査であるため強硬的なので、
それは拒否できる、
というのが正しい整理でしょう。

先の自称専門家のように、
「押印」は行政指導と安直に理解すると、
質問応答記録書の作成も拒否できると誤った理屈
を導きかねないので注意が必要です。