フェラーリは減価償却資産
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第四百十回目。
テーマは、
「フェラーリは減価償却資産」
です。
固定資産の減価償却について、
問題になることの一つに
「時の経過によりその価値の減少しない資産」
の取扱いがあります。
固定資産は使用に伴って価値が減りますから、
その減った価値を費用とする処理が
減価償却です。
しかし、時が経っても価値が減らない資産、
具体的にはゴッホの絵画などですが、
こういう資産は価値が減らないので減価償却を
認める必要もないとされています。
減価償却が認められないのであれば、
それを売却したり除却したりする場合を除き、
その購入金額を一切費用とすることはできません。
このため、法人税の計算においては
「時の経過によりその価値の減少しない資産」
に該当するか否かが大きな問題になります。
過去には、数億円もするような古典楽器である
ストラディバリウスがこれに該当すると
国税から認定され、減価償却を否認されて多額の
追徴課税がなされた事例もあります。
価値が減少しない、となると一般的には
高価な美術品や希少価値のある資産を
意味すると考えられますので、
顧問先がこのような資産を購入すると、
税理士としてはかなり神経質になります。
これに関し、先日限定生産のフェラーリが
時が経っても価値が減らない資産に該当するかが
問題になった事例があります。
問題になったフェラーリは、限定モデルで
全世界での総生産台数が数百台から数千台という
希少価値のあるモデルのようで、
値段も数千万円程度だった模様です。
となると、中古車でも新車以上の値段で
今後も取引される可能性が大きい訳で、
ストレートに考えると、価値が減少しない資産に
該当すると言えそうです。
しかし、この事例のフェラーリは、
一般の車両と同様に、時の経過により価値が
減少「する」資産に当たると判断されています。
その理由として、
①生産開始から10年から20年程度
経過したにすぎないことから、
歴史的価値や希少価値があるものとはいえないこと
②登録をして自動車登録番号標の交付を受けて
公道を走行しているため、車両として使用する
目的で購入されたと認められること
が挙げられています。
①の理由は別にして、
「時の経過によりその価値の減少しない資産」
に当たるかどうかは、
その使用目的とは関係ないはずですから、
②の理由については多少疑義があります。
実際のところ、前述したストラディバリウスは、
それを無償で貸していたのですが、
貸すという使用目的ではなく
希少価値のある楽器という性質から、
減価償却が否認されています。
このため、使用目的ではなく資産の性質で
判断するのが妥当と考えられます。
いずれにせよ、フェラーリは減価償却の対象に
なると明確にされたのは大きいです。
フェラーリの減価償却を否認しようとする
税務調査は多いですから、
一つの反論になる事例と言えます。