インボイスと航空旅客の不思議
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第三百九十四回目。
テーマは、
「インボイスと航空旅客の不思議」
です。
インボイス制度において誤解しやすい論点の
一つに、航空旅客があります。
船舶やバス、そして鉄道による旅客については、
その金額が3万の場合、インボイスの保存が
ない場合にも、その代金について消費税の
控除が認められます。
交通機関を使用する顧客は非常に多いため、
逐一インボイスを交付できないことからこのような
取扱いになっていると考えられますが、何故か
同じ交通機関でも、航空機はこの取扱いの対象から
除かれています。
このため、航空旅客については、金額に関係なく
航空会社の領収書の保存をしないと
消費税の控除が受けられません。
さらに困ったことに、とある税務雑誌の
記事によると、航空券の領収書だけを保存しても
足りない場合がある、と解説されていました。
といいますのも、消費税の控除において必要に
なるインボイスは、サービスを受けた日が
分かるものでなければないとされているからです。
航空会社の領収書には搭乗日が記載されない
ことも多い模様で、それだけではインボイスの
要件を満たしません。このため、この記事では
領収書に加え、搭乗日が書かれた航空券なども
保存すべきと解説されています。
このように、航空旅客におけるインボイスの
取扱いについても、煩雑な処理が必要に
なる訳ですが、従業員を航空機で出張させる
場合には、また別の取扱いがあります。
それは、旅費を実費精算するのではなく、
出張旅費の特例で処理をする、という方法です。
出張旅費の特例とは、簡単に言えば日当の
支給を意味します。
旅費や宿泊費を実費精算することが煩雑である
ことをもって、日当を旅費規程などで決めてそれで
旅費等に充ててもらう、ということが多くあります。
日当は、それが国内出張に対するもので金額が
適正であれば、消費税の控除の対象になると
されています。
インボイス制度がスタートした後もこの取扱いは
変わりませんが、実費精算をせずに規程に
従って支払うのが日当ですから、出張した
従業員から旅費などの領収書をもらう、
ということもありません。
この点を踏まえ、従業員の旅費などに充てる
ための日当の支給については、航空会社の
領収書などの保存がなくても、帳簿に必要事項を
書くことで原則消費税の控除が認められます。
こういう訳で、航空機による従業員の出張に
ついては、その旅費を実費精算するか
日当として支給するかでインボイスの手間が
変わります。
ただし、現状の実務においては、領収書が
もらえる旅費や宿泊費については実費精算をし、
それ以外に出張で発生した経費を補てんする
という名目で日当が支給されることがほとんどです。
このような処理では、航空会社の領収書や
航空券などの保存が必要になりますので、
旅費精算などの処理の見直しも検討する
必要があります。
なお、日当はあくまでも適正額でないと消費税の
控除対象にはなりませんので、金額的に
問題ないか、この点も検討が必要になります。