「修正申告の差し止め」の意味
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第三百七十八回目。
テーマは、
「「修正申告の差し止め」の意味」
です。
インターネットで税務調査について検索した際、
とある著名人の方が税務調査でマルサに
厳しく調査をされた時の話をアップしていました。
この中でマルサから受けた不当な指導として、
脱税を反省したため、税務調査は
継続中であるものの、早急に出そうとした
修正申告書の提出について、マルサの
担当者から差し止められた、と解説していました。
修正申告書の提出は、納税者の任意で
行うものであり、いわば納税者の権利です。
このため、その著名人の方は、提出を
差し止められるなんて権利侵害でとんでもない、
というお考えで、そのために不当と言っていました。
しかし、マルサの担当者もこのあたりは十分に
承知した上で差し止めたと考えられます。
なぜなら、調査による修正申告については、
国税内部において決裁が必要になるからです。
当然のことながら、国税は組織で動くので、
税務調査の決着についても上司の決裁が
必要になります。税務調査の決着の
最終局面は、国税の指導事項の通りの
修正申告書を提出させることですので、その
指導事項を反映していない修正申告では
決裁は通らず、その修正申告を
取下げさせる等して再度修正申告を
提出させる、といった処理が必要になります。
加えて、冒頭の事例ではまだ調査中で指導事項も
固まっていないといった状況ですから、先走って
修正申告書を提出されてもそれと異なる
修正申告が必要になる可能性があります。
こうなると、国税的にも納税者的にも処理が
煩雑になるため、修正申告書の提出を
待ってほしい、という意味でマルサは
差し止めたのでしょう。
なお、修正申告書の提出を止められるとなると、
納税が遅れて延滞税が増える可能性があります。
しかし、このような場合には修正申告書の提出も
不要な「予納」という手続きであらかじめ税金を
納められますので、理論上は延滞税も
増えることはありません。
「予納」を案内せずに修正申告書の提出を
差し止めたのなら問題ですが、従来と異なり
近年は私の原稿を国税の方も読んでいるからか、
予納について案内されることが増えています。
こういう訳で、修正申告書の提出を
差し止められたとしても、税務調査の実態、
とりわけ国税の決裁の状況などを
理解していれば、うまく対応することができます。
国税との交渉ではこの「決裁」が重要で、
国税が上司の決裁を得やすいように、
資料を整えてあげたり、迅速に納付したり
することで有利な譲歩を得ることができます。
なお、先の著名人のコメントについて、フ
ォロワー数ナンバー1と宣伝する税理士が、
「マルサは不当」といったコメントをしていました。
このようなコメントをすると、税務調査に詳しい
ふりをする自分のマーケティングとは異なり、
税務調査についてよくわかっていない税理士
であることをさらけ出してしまうので、発言には
気を付けるべきでしょう。