役員の退職と保険の解約
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第三百六十一回目。
テーマは、
「役員の退職と保険の解約」
です。
役員退職金の原資のために、生命保険に加入する
ことはよく行われていますが、実務上これに
関してよく問題になることの一つに、
退職した役員について掛けていた保険の解約もれ
があります。
一例として、退職時は生命保険のピークでは
ないので解約せず、そのまま保険の加入を
続けた、といった事例があると
聞いたことがあります。
退職金の積立として行う生命保険の保険料は、
その全部又は一部を経費とすることが
できますが、経費になる理由としては役員が
死亡した場合のリスクヘッジであったり、
会社の福利厚生の一環であったりするため、
と解説されています。
いずれにしても、対象になる役員が会社に
所属していることが経費になる一因である
ことは間違いありませんから、退職した後
についてまで保険料を経費にするのは
問題であるのではないか、と言われます。
その一方で、単なるミスで解約を忘れた場合は
仕方ないとしても、生命保険のピークまで
待つために解約しないのであれば、会社にとって
メリットも合理性もある話ですから、
その生命保険の保険料について経費に
できるのではないか、といった見解もあります。
少し脱線しますが、退職するため解約した場合の
生命保険の保険金額と、経費になる
退職金の金額は全く別物と言われます。
具体的には、生命保険の解約返戻金で
1億円もらったからといって退職金を
1億円出せる訳ではないということです。
このように、生命保険と退職金は別物という
考え方からすれば、両者を同一に考える必要は
ないため、退職後の生命保険料も経費として
認めてしかるべき、といった解釈も成り立ちます。
この点、国税庁から明確な見解が
出ている訳ではありませんが、とある税務雑誌で
国税OB税理士が、退職後の保険料については
経費にならない、と解説していました。
この解説では、上記の別物という解釈の
合理性も認めつつも、生命保険料が
経費になる大前提の理由が
優先される、といった見解が示されています。
私の個人的な意見も、この国税OB税理士と
同様で、退職後の保険料を経費とするのは
やはり難しいと思います。
退職金の原資を積み立てるために
保険に加入するのであれば、その役員に
利益を与えることになりますので、
法人税の本旨としては経費ではなく
役員給与として課税すべきものです。
その例外として、一定の生命保険について
経費計上が認められる以上、経費になる要件は
厳格に解釈しなければならないと考えられます。
こういう訳で、役員の退職時には
積み立てた保険の解約を忘れることのないよう、
注意が必要です。