Column/コラム

他の相続人や被相続人の隠ぺい仮装と重加算税

他の相続人や被相続人の隠ぺい仮装と重加算税

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百四十一回目。

テーマは、

「他の相続人や被相続人の隠ぺい仮装と重加算税」

です。

相続時には「争族」が発生することもありますが、
この場合に問題になることの一つに、その争ってい
る他の相続人が情報を開示してくれないことがあり
ます。

相続税の申告については、被相続人の財産全体が分
からないと正しい申告ができませんので、相続人全
員の協力が必要になります。

しかし、争族が発生してしまえば、これができない
ことになり、結果として正しい申告もできないこと
になります。

正しい申告ができないとなると、その原因によって
は重加算税も課税されることになる訳ですが、この
場合、争っている他の相続人が財産を隠ぺいし、自
分は知らなかったといったケースが問題になります。

常識的には、あくまでも財産を隠しているのは他の
相続人で、自身は隠ぺいしていない訳ですから、自
分に重加算税は課税されないはずです。

この点、昭和の時代の古い裁決事例などを見ますと、
隠ぺいした財産を管理していた相続人にのみ重加算
税が課税されています。

ここでは、隠された財産の存在について、その財産
を管理していない他の相続人は把握しようもないた
め重加算税はかからない、と至極まっとうな判断が
なされています。

しかし、近年の事例では、自分が知らなかったとし
ても重加算税が課税される場合がある、といった判
断がなされることもあります。

具体的には、他の相続人に相続財産の調査や相続税
の申告を丸投げした、とされる場合です。

法人税の場合、とある役員に経理処理を丸投げした
ためにその役員の横領が発生した場合、内部けん制
を整備せずに丸投げした会社に責任があるためその
横領に対して重加算税が課税されるとされています。
これと同じ理屈が相続税においても成り立つという
訳です。

このため、丸投げした責任を問われるのが近年の傾
向ですから、相続税の申告においては、特定の相続
人に処理を丸投げすることなく。相続人一人ひとり
が主体的に関わる必要があるのです。

ところで、自分以外の責任で重加算税が課税される
という論点からすれば、自分が知らないうちに被相
続人が隠ぺい仮装行為を行っており、その隠ぺい仮
装された事実関係を基に相続税や所得税の準確定申
告をした場合の取扱いも問題になります。

この場合ですが、税務の大原則として、被相続人の
納税義務は相続人が承継するとされています。この
大原則に倣い、重加算税の対象になる行為について
も、原則として相続人が承継するとされています。

このため、このようなケースについても、重加算税
の対象になり、相続人が過大な税負担を負うことに
なりますので、よく言われる話ですが、早めに相続
の問題については、税務面を含めて相続人と話し合
っておく必要があると言えます。

相続問題は早期の対応をする。「争族」対策だけでな
く、やはり税務対策でもこれが必須なのです。