Column/コラム

6項と信義則違反

6項と信義則違反

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百三十七回目。

テーマは、

「6項と信義則違反」

です。

税務上、認められることはほとんどありませんが、
納税者の最後の盾ともいえる防御方法として、税務
署の信義則違反があります。

民法の1条に、「権利の行使及び義務の履行は、信義
に従い誠実に行わなければならない。」という規定が
あります。これが信義則です。

日本は自由主義の社会ですので、基本的には個人が
自由に経済活動ができます。

このため、権利行使にしても義務の履行にしても個
人が自由にできるはずですが、そうなると恣意的な
行動をする者もいて、不適切な問題が生じることも
あります。

この点を踏まえ、相手の信頼を裏切らないよう誠実
に行動すべきと定めており、それが信義則です。

法律の1条は、その法律の中でも最も重要な原則を
定めたものですので、この原則に違反した取引は民
法上違法とされています。

この民法の信義則は、税務においても妥当するとさ
れており、税務署がその取引相手である納税者の信
頼を裏切るような課税をした場合、それは当然に違
法になると考えられています。

一例として、「課税されないと言われたのに後日課税
された」といったことが挙げられます。

税務署も人間の組織である以上、誤った行政を行う
こともあり得ますから、税務署と争う場合の最終手
段として、裁判において信義則違反を主張すること
があります。

とはいえ、国税当局の信義則違反はよほどの悪質性
がないと認められません。

このため、税務署の信義則違反が認められることは
基本的にはありません。

しかし、何らかの反論根拠がなければを税務署を訴
えることもできない訳ですから、戦う手段としてこ
の原則があることは納税者にとっては有用です。

ただし、近年増えている、安易な節税による相続税
スキームを否認できるという総則6項を使われると、
信義則違反で争うことも非常に困難になります。

この総則6項は「評価方法が著しく不適当」の場合
に、相続税の通達に関係なく国税庁長官が自由に相
続財産の評価ができる、という規定です。

確かに、著しく不適当かどうかの「解釈」は意味不
明ですが、著しく不適当という「適用要件」は明記
されていますので、評価額と時価に差がある場合に
は、課税される恐れがあることは理解できます。

このため、この規定が適用されリスクを常に納税者
は事前に把握できますので、不意打ち的に国税当局
から課税されることはないという結論になります。

結果として、その可能性があることを知らせている
以上、総則6項を使われたとしても、納税者の信頼
を裏切ったとまでは言えません。

となると、この規定を使っても信義則違反にならな
い、という言い訳が成立することになります。

通達は国税庁ホームページにも掲載され、納税者に
も周知されている公的な文書ですから、それと矛盾
した内容で税金を取ると、納税者の信頼を裏切った
として信義則違反になる可能性があります。

しかし、同じ相続税の通達で総則6項を定め、あら
かじめ言い訳をしているので、納税者を騙していな
いという反論が成立します。

この信義則違反の主張も難しくなるのが総則6項で、
やはり非常に大きな問題があると言えます。