Column/コラム

混同を利用した相続税対策の是非

混同を利用した相続税対策の是非

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百三十七回目。

テーマは、

「混同を利用した相続税対策の是非」

です。

先日、とある相続税対策スキームについて、審判所
で国税当局が負けた事例があるようです。

この事例の概要は以下の通りです。

①まず、相続人が被相続人に対し、建物を時価相当
額で譲渡する

②その売買代金は相続人が被相続人に貸し付けをす

というものです。

相続税対策として、銀行から借金をして建物などの
不動産を買う、ということはよくあります。

こうすることで、マイナスの財産である借金は額面
で評価される一方、建物などの不動産は時価に比し
て非常に小さく評価されることになります。

結果として両者の差額で課税対象となる相続財産の
純額はマイナスになり節税になる訳です。

この事例においては、それを相続人と被相続人とで
行った訳ですが、銀行から借金する場合と比して、
混同という仕組みが使えることが特徴です。

混同とは、債権者と債務者が同一になったため、借
金も貸付金も相殺されることを言います。

先の②の通り被相続人に貸した相続人のお金につい
て、③借金としてその相続人が承継するため、その
借金はその相続人において被相続人への貸付金と混
同により消滅することになります。

通常の相続税対策のように、銀行からお金を借りる
のであれば、相続税を節税できたとしても、その後
銀行への返済を行わなければならず、相続人に負担
が残ります。

実際のところ、相続税の節税ができたものの、借金
をして購入した建物に空室が発生し、返済が滞って
しまい痛い目にあった相続人の存在が数年前に社会
問題になりました。

しかし、銀行を使わないのであれば、このような問
題は生じず、より有効な対策となります。

このスキームに対し、国税当局は混同によって借金
が最終的にはなくなることが見込まれるのであれば、
借金として相続税の計算上、相続財産として相続財
産から控除することは認められないとして課税処分
をしています。

法律上、控除される借金は「確実と認められる」借
金である必要があるとされています。このため、実
質的に確実と認められないものは対象にならないと
解釈できますから、法律的にも妥当な処分と考えら
れます。

しかしながら、審判所は建物の相続税評価額に相当
する債務については、「確実と認められる」という判
断をしたようです。

同じ一つの借金であるのに、建物の評価額部分は確
実で、それ以外は確実でないというのは、一見する
と筋が通りません。

建物部分については相続税の課税対象になるため、
その部分に相当する借金については引いてあげない
と、相続税の金額が大きくなりすぎるので困る、と
いった温情的な判断なのでしょうか。

税法は厳しいもので温情的な解釈は許されないとい
われますが、たまにこのような温情的な判断もなさ
れますので、法律だけでなくいろいろな事例にも当
たる必要があります。