Column/コラム

生計一の解釈の相違

生計一の解釈の相違

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百二十五回目。

テーマは、

「生計一の解釈の相違」

です。

所得税や相続税で問題になる用語の一つに、「生計を
一にする」というものがあります。これは、家族な
ど財布が一つである場合を意味します。

一例として、扶養親族があれば所得税で扶養控除が
認められますが、その扶養親族の範囲は生計を一に
する親族に限られています。

財布が同じであるため養育費等の支出をせざるを得
ないため、担税力に欠けることから所得控除が認め
られるという仕組みになっているのです。

相続税においても「生計を一にする」かどうかが問
題になることがあります。特に問題になるのは、小
規模宅地の特例の判定です。

小規模宅地の特例とは、被相続人が事業などで使っ
ていた宅地について、一定の要件を満たす場合に認
められる評価減ですが、この宅地の範囲に生計を一
にする親族が事業などで使っていた宅地も含まれる
とされています。

同じ「生計を一にする」用語ですが、税務雑誌で紹
介された最近の裁判において、その意味は異なる、
というショッキングな判断がなされた事例がありま
す。

ここでは、所得税においては先の通り、同一の財布
と言えるかで判断するとされたのですが、相続税に
おいてはそう単純な話ではないと解説されています。

具体的には、生計を一にする親族が事業で使ってい
る宅地に対して、相続税を課税されると担税力の問
題があるために小規模宅地の特例が認められている
という趣旨を踏まえて解釈するべき、としています。

このような趣旨を踏まえると、その宅地における生
計を一にする親族の事業によって稼いだお金で、被
相続人も生活ができていたという関係がなければな
らない、とされたようなのです。

私を含め多くの税理士は、「生計を一にする」という
ことを財布が一緒と捉えていますので、財布が一緒
であっても小規模宅地の特例が認められない場合が
あるとなると、大変です。

小規模宅地の特例の適用を誤ると、数千万単位の税
額に影響することもある訳で、場合によっては税理
士も訴えられる話になります。

ところで、税法の解釈においては、「借用概念論」と
言われる考え方があります。これは、民法などの用
語の意味と、税法の用語の意味は全く一致している
ため、民法などにある用語の意味そのままで税法を
解釈すべき、という考えです。

この点、多くの学者が解説していますが、相続税と
所得税で同じ用語でも意味が違うなら、この「借用
概念論」は正しい解釈方法ではないと思われます。

税法を勉強するために、租税法学者の論文を読まれ
る方もいらっしゃいますが、学者の意見は個人的な
意見に過ぎず、その実何ら拘束力はありません。

それよりも、上記にもあります通り趣旨を踏まえて
じっくりと法律を読むことが重要と考えます。