Column/コラム

市街地価格指数の境界線

市街地価格指数の境界線

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百二十四回目。

テーマは、

「市街地価格指数の境界線」

です。

譲渡所得の計算でよく問題になるのは、「市街地価格
指数」を前提とした取得費の計算が認められるか否
かです。

相続するなど、古くから所有している土地について
は、いくらで購入したのか分からないことが多いで
す。

譲渡所得は、譲渡収入から譲渡した資産の取得費を
控除して計算することになりますが、このような購
入金額が分からない資産について、控除する資産の
取得費は、法律においては譲渡収入金額の5%とさ
れています。

5%となるとあまりにも少ないので、何か特別な方
法で購入金額を推定し、その推定金額を取得費とす
るためによく取られる方法が市街地価格指数による
推計です。

これは、平成12年の裁決事例で税務当局が使った
方法で、審判所からも合理的と認められているため、
一般の納税者も使えると考えられています。

しかし、実際の税務調査では、この方法で譲渡所得
を申告すると税務当局から法律に則って収入金額の
5%とすべき、と指導されることが多くあります。

審判所が認めているのになぜ認められないか、その
理由を聞かれることが多いのですが、実は市街地価
格指数による推定は、いろいろと制限がある方法で、
その制限をクリアしないと使えないのです。

紙面の都合上、その制限のすべてを解説することは
できませんが、先日の裁決事例で指摘されたものを
紹介します。それは、昭和27年12月31日以前
に取得した土地については、この方法は使えないと
いうことです。

この理由は簡単で、所得税の特例で、昭和27年1
2月31日以前に取得した資産について実際の購入
金額が分からない場合、昭和28年1月1日の相続
税評価額を譲渡所得の計算上、控除すべき取得費と
するという規定が所得税法上設けられているからで
す。

この規定が優先的に使われることになりますから、
市街地価格指数による計算は認められないと結論付
けられる訳で、先の平成12年の裁決事例における
土地については、取得時期はこの要件を満たしてい
ました。

税理士試験は基本法律の丸暗記ですし、税理士試験
を受けない国税OB税理士も、基本税務当局の出世
で必要にならない税法を知りません。

このため、税理士は弁護士などとは異なり、リーガ
ルマインドや法律の解釈能力が乏しい資格であると
も言われます。

このため、裁決や判例について結果だけを暗記し、
どうしてこのような結果になるのか、法律解釈を通
じた過程を見落とすことがありますので注意が必要
です。

よく使われる言葉ですが、税法も法律である以上、
それを飯のタネとする税理士も法律家である必要が
ある訳で、税法の研究に努める必要があります。

このような研究は、なかなかお金にならないので後
回しにしてしまうことが多く、書籍や税務資料を著
作権侵害しただけの浅い知識なのに、税法に詳しい
ふりをする方も多いので困るのですが。