Column/コラム

電子保存の義務化の延期が示す税制の課題2

電子保存の義務化の延期が示す税制の課題2

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百二十二回目。

テーマは、

「電子保存の義務化の延期が示す税制の課題2」

です。

前回、電子取引のデータ保存の義務化の延期によっ
て明らかになった税制上の問題の一つを指摘しまし
たが、今回はもう一つの問題、税制改正の解説につ
いてです。

この義務化について、企業や納税者の対応が間に合
わなかった原因の一つは、企業の税務をサポートす
る税理士の改正対応が遅かったことにあります。

税制改正は毎年12月に公開されますので、早けれ
ばそのタイミングで改正の解説などがなされますが、
こと電子取引のデータ保存の義務化について、業界
で話題になり始めたのは、国税庁が取扱いを公開し
た2021年7月くらいからでした。

それまでは特に話題にもならず、むしろ電子帳簿保
存法は要件が緩和されて使いやすい制度になって喜
ばしいなどと、全くの正反対の解説がなされており、
その通りに考える専門家がほとんどでした。

本来、税制改正が公開される12月にきちんと内容
を把握した上で、お客様に必要な対応を指示するの
が税理士の責務ですが、税理士も忙しいため改正内
容を正確に把握することは難しいです。

こういう訳で、12月には「どこよりも早い改正セ
ミナー」が行われることが多く、そのセミナーを多
数の税理士が受講しています。

このようなセミナーを行う講師は、短期間で税制改
正を解説するという特殊性がありますので、とんで
もない報酬をもらっていると耳にしますが、こんな
報酬に見合う解説など基本していません。

単に、どこかからか国税の内部情報を仕入れた上で、
税制調査会の資料を転載して解説するだけです。

困ったことに、電子取引のデータ保存の義務化は、
税制調査会の資料では小さい字で書かれていました
ので、このような重大な改正があることにも気づか
ないままろくに解説もせず、スルーされたのです。

なお、このような資料を公開するのは、そもそも著
作権的に問題があるのではないかと思われます。

次に、近年は12月の改正内容の公表があり次第、
税理士がブログなどで一般納税者向けに改正を解説
することが多くありますが、この改正は税制改正大
綱をろくに検討せず、単にコピペしただけのものが
多いです。

困ったことに、税制改正大綱でも電子取引のデータ
保存の義務化は1行で、税理士が苦手な法律の専門
用語で簡単に書かれていたため、詳細に内容を検討
しないとスルーしてしまいます。

単に、アクセスを集めたいだけの税理士は、「早い税
制改正解説をした」という既成事実を作りたいだけ
で、コピペで済ませますので、本来周知すべき改正
が周知されず、対応が遅れてしまったのです。

税制改正は早さがすべてと言われますが、この考え
方も今回の問題の一つです。税制改正は中身が重要
で早さは二の次ですので、今後の対応を再度検討す
る必要があります。