電子保存の義務化の延期が示す税制の課題1
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第四百二十一回目。
テーマは、
「電子保存の義務化の延期が示す税制の課題1」
です。
インボイス制度がスタートし、その対応で税理士は
もちろん、経営者の皆様も大変な負担を強いられし
たが、その次には電子データの電子保存の義務化が
スタートします。
この義務化については、至る所でその問題点が指摘
されましたが、そもそもは2022年1月からスタ
ートが予定されていました。
しかし、到底その対応は無理ということで2年延期
されたものですが、それでもまだ足りないというこ
とで、義務化されるにしても紙と一緒に保存するこ
とで要件が緩和されるなどの措置も設けられます。
この延期や要件緩和に対しては、歓迎する声が大き
い反面、苦労して対応を準備してきた企業の担当者
の中には、猶予されるならここまで急がなかった、
と怒りの声も大きいです。
法律は国民の権利や義務を制限するものですから、
本来はこのように簡単に撤回できるものではありま
せん。
このような事情がありますので、従来、財務省主税
局は法律を作り間違えるようなことをしても、時期
を見ていったん決めたルールは変えられないとして、
次の機会で改正をしていました。
しかし、今回は実質的に決めた内容を撤回している
訳で、まさに日本の税制において前代未聞の状況が
生じているということになります。
このような事態が生じた現実を踏まえた場合、現状
の税制の問題が大きく二つほど見えてきます。
一つは、財務省主税局に税制を作る力がなくなりつ
つある、ということです。令和3年度改正で、いっ
たん電子取引のデータ保存が義務付けたのですが、
このような制度を義務付けるのであれば、当然のこ
とながら会計ソフトを作るベンダーなどとも詳細に
打ち合わせを行っておくべきです。
しかし、このような事績があったとは到底思えず、
いつもの通り密室で税制を作ったとしか思えません。
実際のところ、とある会計ソフトのベンダーが、対
応が間に合わないといった陳情をした、といった話
もありました。
税制は政治家の利権などとつながりやすいものです
から、基本的には密室で制度を作っています。結果
として、税制改正大綱が出るまで改正内容がよく分
からない、といったこともよくあります。
しかし、経済活動や社会情勢が複雑になった昨今、
民間の知恵を活用することなく密室で税制を作るこ
とに限界が来ていることは間違いありません。
これに関し、近年は国税庁の通達改正でパブリック
コメントが行われることが多くあります。
このパブリックコメントを通じ、税理士などの専門
家や実務に携わる企業の担当者から有益な意見が寄
せられ、結果として通達の内容がよくなるとともに、
正しく解釈ができるよう、改正の趣旨も明確になっ
ています。
民間の知恵を活用することは税制にとって非常に有
益ですから、通達だけでなく、税法を作る力を失っ
ている財務省主税局が作る法律などについても、広
くパブリックコメントを行うべきと思われます(以
下次回)