Column/コラム

棚卸資産の評価と重加算税

棚卸資産の評価と重加算税

棚卸資産の評価と重加算税

 

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

 

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

 

私のパートは【毎週木曜日】です。

 

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

 

それでは、第四百十一回目。

 

テーマは、

 

「棚卸資産の評価と重加算税」

 

です。

 

以前質問を受けた事例ですが、
棚卸資産の評価誤りに対し、
重加算税の対象になると
税務署から指摘された税務調査があります。

 

棚卸資産については、その金額をいくらにするか
評価が問題になります。
例えば、工業製品などは工程の進捗割合によって
評価が変わるとされていますので、
どのくらい製造が進んでいるかなど、
合理的に計算する必要があります。

 

合理的に計算すると申しましたが、
何をもって合理的かは会社の状況や
製品の内容によっても異なる話ですので、
ケースバイケースの判断になり、
画一的に計算できるものではありません。

 

このため、棚卸資産の評価について税務調査で
問題になるのは、納税者の判断が合理的か否か
ということが中心になります。

 

合理的かどうかというのはいわゆる
見解の相違でグレーゾーンの話ですから、
棚卸資産の評価誤りは、原則として
不正取引に対して課される重加算税の
対象にはなりません。

 

この点、国税の通達にも明記されています。

 

現職時代の実務を考えてみても、
棚卸資産の問題で重加算税を課税したのは、
棚卸資産の「評価」ではなく、
棚卸資産の「数量」に関するものでした。

 

例えば、多数の商品を売っている会社は
期末に在庫の数を数えて在庫表を作成します。
この在庫表をエクセルで作成する場合、
意図的に一部の商品を除外したり数量を
改ざんしたりして在庫表を作成すれば、
棚卸資産の金額は小さくなり、
結果会社の利益も少なくなります。

 

こういう場合には、
意図的に棚卸資産を少なくした、
と言えますから重加算税の対象になります。

 

在庫を考えていただくと分かりやすいと
思いますが、棚卸資産については、
資産をどのように評価するかという「評価」が
問題になる場合と、棚卸資産の「数量」が
問題になる場合の二つがある訳です。

 

前者については、基本的には判断の問題ですから
先の通り重加算税の対象にはなりません。
何より、判断ということは内心の問題ですから、
証拠が残ることも多くはなく、意図が問題になる
不正取引と断定することが難しいことになります。

 

一方で、数量を偽造する場合は、
在庫表を改ざんするなどしますので、
証拠が残りやすく重加算税も課税しやすい訳で、
判例でも数量の仮装で重加算税が
課税されるケースがほとんどです。

 

重加算税を課税するための証拠を
発見する難しさも考慮されて、
棚卸資産の評価の問題については
重加算税の対象には原則しない、
と国税の通達では決められているのかと考えます。

 

冒頭の質問に係る税務調査では、
棚卸資産の評価額について、
その金額の根拠が乏しいことから
意図的な不正で重加算税と
税務署は指導した模様です。

 

毎年出鱈目な数字を書いて過少申告をしている、
といった場合は露骨な不正行為として重加算税の
対象になる場合もありますが、
そうでなければ意図的な不正とは言えず、
重加算税の対象にはなりません。

 

実際のところ、最終的には国税が指導を撤回し、
重加算税は課税されませんでした。