自社株の評価はまず簿価純資産
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第四百七回目。
テーマは、
「自社株の評価はまず簿価純資産」
です。
私は全国の税理士先生から税務の
質問を受けますが、その質問の中で
非常に多い内容がオーナーの
自社株の評価に関するものです。
税理士は中小企業を
顧問にすることがほとんどですが、
中小企業は原則として
社長と株主が同一人物ですから、
社長が自社株を売却するような場合に、
その売却金額をいくらと評価するのがいいのか、
それが問題になります。
困ったことに、
税務は「時価」で取引しないと
売却時に課税問題が生じるとしていますから、
「時価」を適正に評価し、
原則としてその金額で売却する必要があります。
この自社株の評価については、
通説として所得税や法人税の非上場株式の
時価に関する通達に基づいて行うべき、
と言われます。通達は国税庁が作るものですから、
この通達の通りに評価して売買すれば、
国税は文句を言わないはず、
という共通理解があります。
その一方で、
この通達は内容が分かりづらいだけではなく、
そこで規定されている方法も複雑ですから、
誤った解釈をしていないか、よく質問を受けます。
困ったことに、裁判所もこの通達の評価を
「時価」とすることが多いため、
この通達の評価を仮に間違えてしまうと、
大きな問題になると
税理士の中では考えられています。
実際のところ、この通達の
評価方法の解説だけのセミナーを行って、
ご飯を食べている税理士もいるほどです。
こういう訳で、
私にもこの通達評価に関する質問が来る訳ですが、
一つ言っておくべき真実は、
税務署の調査官の自社株の評価は、
「簿価純資産」ベースということです。
簿価純資産とは、
決算書の純資産の金額を意味します。
理論上、この金額は株式総数の評価額の
合計と等しいとされていますので、
簿価純資産を発行している株数で割って、
売却する株式の数を掛ければ、
理論上「時価」である売却金額を
算出できるとされています。
理論上と申しましたが、
簿価純資産は決算書を見れば分かりますし、
株式数も定款などで分かりますから、
この方法は誰にでもできる簡単な方法です。
国税庁の通達の方法は、
繰り返しですが難しいので、
ほとんどの税務署の調査官は簡単に計算できる
「簿価純資産」ベースの評価をして、
あたりをつけ、その金額と取引価額を比較して、
著しい差がないか確認することがほとんどです。
そして、
差がなければそのまま
スルーすることも多くあります。
こういう訳で、
自社株の評価でまず気にしなければならないのは、
誰にでも計算できる「簿価純資産」
ベースの評価なのです。
この評価金額と、
国税庁の通達の評価金額に大きな差がなければ、
実際のところ税務実務ではあまり問題になりません。
自社株の評価はまず通達で、と解釈すると、
一番重要な税務署の評価方法という視点を
忘れてしまうので、まずは「簿価純資産」を
きちんと確認してみましょう。