Column/コラム

金融機関は税務を使った営業を見直すべき

金融機関は税務を使った営業を見直すべき

金融機関は税務を使った営業を見直すべき

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百六回目。

テーマは、

「金融機関は税務を使った営業を見直すべき」

です。

近年、財産評価基本通達総則6項を使った
国税の否認事例が新聞紙面を賑わせています。

本メルマガでも何度も取り上げていますが、
これは相続税や贈与税の財産評価上、
税務署が決めたルール通りの評価をした場合、
租税回避につながるなど
不適切な評価額となるときに、
税務署が自分で決めた通達に関係なく、
別途自分たちが適切と考える評価で
評価できるという規定です。

相続税や贈与税の評価はいろいろと穴があり、
その穴を突かれると課税逃れにつながりますので、
このような規定が設けられていると
一般には言われています。

この規定が適用されるかどうか、
裁判所が判断する際、
近年は「租税回避の意図があるか」といった
観点から審査することが増えています。

先日あった事例では、
金融機関の稟議書に
「相続税対策で融資を申し込む」
といった記述があったことを踏まえ、
裁判所はこの規定に基づく国税の課税処分を
合法と判断しています。

こういう訳で、
節税目的をできるだけ押さえることとしたり、
たくさんの証拠書類を作る金融機関との取引には
注意したりしましょう、
とセミナーなどで解説されていますが、
もっと重要なのは金融機関の営業を
安易に信用しないことです。

聞いたところによると、
先の稟議書の事例は、
納税者が相続税の節税目的で融資を
自発的に申し込んだのではなく、
金融機関が相続税の節税ができると営業した結果、
融資を申し込んだようなのです。

多くの富裕層にとって、
最大の取引先は金融機関であることは
間違いありません。

このため、
金融機関は富裕層と強いチャネルがありますから、
相続税の節税商品を富裕層に売ることがあります。

税務リスクを正確に検討していればいいのですが、
先の事例の通り、その検討が甘く、
引いては大きな問題に
発展することが多々あります。

困ったことに、
これらの節税商品ですが、
その提案書には、必ず小さい字で
「税務については、
顧問税理士に意見を聞いてください」
といったリスクヘッジの文言が
書かれていることが通例です。

結果として、
金融機関の営業を信頼して節税を行って、
後日の税務調査で実際に問題が発生したとしても、
金融機関を訴えることは難しいでしょう。

こういう訳で、
金融機関の節税提案を安易に信頼するのも
危険であり、もっと言ってしまえば
税理士的には怖い節税も多いため、
提案を差し控えていただくとありがたい、
と考えることもよくあります。

実際のところ、
税務相談は税理士法によって、
税理士以外には制限されていますので、
税務当局がこの法律を使えば
金融機関の節税提案をブロックすることも
不可能ではないはずで、むしろ税理士法的には
やるべきことのようにも思います。