税に対する公平感への悪影響が危惧される調査事例
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第三百九十八回目。
テーマは、
「税に対する公平感への悪影響が
危惧される調査事例」
です。
税務当局が「税に対する公平感への悪影響が
危惧される調査事例」として、いくつか悪質と
判断した事例について、政府税制調査会に
おいて説明したことが話題になっています。
この調査事例は6つほど挙げられており、中でも
(1)更正の請求時に行われた仮装隠ぺい取引や
(2)長期に渡る無申告などについては、その弊害
を防止するため、今後の税制改正で防止規定
が措置される可能性がある、といった報道も
なされています。
税額計算を間違えてしまい、過大に税金を
納めてしまったような場合には、納めすぎた
税金を還付してもらうために、更正の請求が
認められます。
更正の請求は現状5年間認められることもあり、
広く行われていますが、先の調査事例で問題と
されているのは、更正の請求において不正行為を
行って還付を請求したとしても、その不正な
還付金額に遅滞して重加算税を課税することが
できない、ということです。
売上除外などの隠ぺい行為や架空経費を計上する
仮装行為に基づいて「申告」を行うと、重加算税
という高額のペナルティーが課されます。
しかし、更正の請求は「申告」ではありません
ので、現状は重加算税の対象にならないとされて
います。このため、架空の経費の領収書を
作成し、経費の計上もれがあるとして更正の請求
を行った納税者には、重加算税を課税できなかった
模様です。
次に、無申告は1年でも好ましくありませんが、
高額な所得があるのに数年間にも渡り無申告
だった事例があるようです。通常、このような
連年無申告は重加算税の対象になると
言われますが、連年無申告に対して重加算税を
課すためには、意図的に申告していないことが
客観的に分かるくらいの事実関係が必要とされています。
このため、悪質性はあると判断されるのに、
十分な証拠がなく重加算税を課税できない場合も
あるようです。
具体的に法改正されるか、そして法改正される
としてどのような仕組みになるか、執筆時現在に
おいては分かりませんが、仮にこれらを防ぐ
税制改正が実現すれば、税務当局が重加算税を
課税するケースが増えることは間違いありません。
言うまでもなく、不正は論外ですので、今まで
以上に適正な申告を行うことに心がける必要があります。
その他、この調査事例の中には、「調査時に資料の
提示・提出を拒否・遅延された事例」も紹介されています。
「遅延」とありますので、これだけ聞くと
税務調査対策の王道である税務調査の
長期化について、税務当局が厳しい目を
向けるようになったという印象を受けます。
しかし、資料を読む限り、あくまでも
「正当な理由なく」長期化することを問題に
していることが読み取れます。正当な理由が
あれば長期化は今後も問題ない訳ですから、
長期化させるための合理的な理由を用意する
とともに、それが合理的であることについて逐一
国税調査官の了解を得ながら、税務調査をうまく
乗り切ることとしましょう。