Column/コラム

相続時精算課税はリスクも大きい

相続時精算課税はリスクも大きい

相続時精算課税はリスクも大きい

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第三百九十二回目。

テーマは、

「相続時精算課税はリスクも大きい」

です。

前回、令和5年度改正による相続時精算課税の
贈与について解説しましたが、現時点で言われる
賢い相続税対策としての生前贈与は、

1 親からは相続時精算課税の贈与
2 祖父母からは贈与税の暦年課税の贈与

を受けるというものです。とりわけ、
令和5年度改正においては、暦年課税の贈与の
持戻し計算の期間が3年から7年に延長されます
ので、暦年課税の贈与を賢く行うのであれば、
暦年課税は孫への贈与を中心とするべきです。

実際のところ、youtubeなどでは多くの専門家が、
相続時精算課税と暦年課税の贈与をこのような
形で使うことを奨励しており、少なくとも改正が
スタートする令和6年以降は、相続時精算課税の
贈与が飛躍的に増えると見込まれます。

しかし、相続時精算課税にはリスクが
いくつかあります。一つは、相続時精算課税は
撤回できないということです。

相続時精算課税は相続と贈与を一体で考える制度
ですので、年間110万までの贈与が相続時にも
非課税になる、というのは非常に違和感があります。

理論的に正しくない制度は、いろいろな歪みを
生じさせますので、税制改正で見直されることが
よくあります。このため、相続時精算課税の
基礎控除は、将来的に見直される可能性があると
個人的には考えています。

仮に基礎控除がなくなれば、相続時精算課税を
辞めたいと思うでしょうが、過去のすべての
贈与と相続を一体で考えるのが相続時精算課税
ですので、いったん選択すると撤回できないと
法律で規定されています。

となれば、将来の税制改正により基礎控除は
なくなるが相続時精算課税は辞められない、
といった不利益が発生する可能性があります。

むしろ、このような状況を作るために、過渡的な
対応として納税者に有利な相続時精算課税の
改正を令和5年度改正で国は行ったようにも思われます。

次に、相続時精算課税はそれを選択した後の
贈与はすべて、相続財産として加算される点にも
注意しなければなりません。

暦年課税の贈与では持ち戻し計算される期間が
短いため、仮に贈与税の申告が漏れたとしても、
現行では贈与税の時効である6年間経過すると
相続時に課税されることはありません。

しかし、相続時精算課税では加算される期間が
相続税の時効である被相続人である贈与者の
死亡日から5年となり、数十年前の贈与税の
申告もれ財産についても、相続財産として申告
する必要が生じます。

言い換えれば、相続時精算課税を選択すると
税金の時効がほぼなくなる、と言っても
過言ではありません。

とりわけ、この点は名義財産について問題になると考えています。

名義財産は被相続人の財産として相続税の
対象になるか、それとも被相続人が贈与した
名義人の固有の財産になるかの判断について
税務調査で揉めます。

後者なら相続財産にはなりませんが、
相続時精算課税なら贈与財産にも相続税が課税
されますので、どちらの場合も課税されます。