Column/コラム

令和5年度改正と相続時精算課税の贈与

令和5年度改正と相続時精算課税の贈与

令和5年度改正と相続時精算課税の贈与

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第三百九十一回目。

テーマは、

「令和5年度改正と相続時精算課税の贈与」

です。

令和5年度改正においては、生前贈与と相続の
一体化の流れの中で、相続時精算課税について
大きな改正が行われました。具体的には、
相続時精算課税においても通常の贈与税の
暦年課税と同様に、年110万の基礎控除を
認めるという取扱いが創設されることになりました。

基礎控除の範囲内であれば、贈与税が
かからないことはもちろん、その部分については
贈与者の相続時に、相続税の対象として
加算されることもないとされています。

現状の相続時精算課税は、2500万の
特別控除額の範囲なら贈与税はかからない
ものの、相続時精算課税により贈与した
財産は、この特別控除額の範囲内でも
全額贈与者の相続財産に加算され、
相続税の対象になります。

贈与時に非課税になる金額が多い反面、
相続時には贈与した財産が全部課税対象に
なる訳ですから、相続時精算課税は税負担の
先延ばしに過ぎません。このため、現状の
相続時精算課税は使い勝手が悪いと
言われますが、改正後は年110万までの
基礎控除の範囲内の贈与であれば、相続時にも
課税されない訳で、相続時精算課税
を使った生前贈与がやりやすくなります。

なお、この改正後の相続時精算課税の
基礎控除の取扱いは、現状の贈与税の
暦年課税の持戻し計算よりも有利です。

現状、暦年課税の対象になる贈与を行った
贈与者が、贈与者の相続開始前3年間に
相続人等に贈与した財産は、贈与者の
相続財産に加算して相続税を計算することに
なっています。これが暦年課税の持戻し
計算ですが、持戻し計算の対象として
加算される過去3年間の贈与財産の
評価額から、年110万の贈与税の
基礎控除を控除することはできません。
このため、過去3年間、毎年110万の
範囲で贈与を行っても、その贈与財産の
全額が相続時に加算されます。

繰り返しですが、令和5年度改正後の
相続時精算課税は、年110万の範囲の
生前贈与なら、贈与のタイミングに関係なく、
相続税の計算で加算されることはありません。
こういう訳で、相続税対策として生前贈与を
行うのであれば、この改正がスタートする
令和6年1月以降は、暦年課税に代えて
相続時精算課税を使った方がいい、とも言われます。

それに止まらず、もっと賢い生前贈与の
やり方は、親子の贈与は相続時精算課税を使い、
祖父母から孫への贈与は暦年課税の贈与を
使うことです。贈与税の暦年課税の持戻し計算は、
贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した者に適用されます。

孫は相続人ではありませんので、相続財産を
取得する可能性は低く、持戻し計算の対象に
なることは多くありません。この要件を満たせば、
親からの贈与につき相続時精算課税の
基礎控除110万と、祖父母からの贈与につき
暦年課税の110万の、合計年220万の
範囲なら、贈与税も相続税も免税で親や
祖父母から子に財産を移転できることになります(以下次回)。