Column/コラム

生命保険と損害保険の収益計上の差異

生命保険と損害保険の収益計上の差異

生命保険と損害保険の収益計上の差異

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第三百八十回目。

テーマは、

「生命保険と損害保険の収益計上の差異」

です。

半分経費になる生命保険を積み立てて退職金の
原資とする、といったことを行う会社は多い
ですが、実務上積み立てた生命保険について、
どのタイミングで収益に計上すべきか問題に
なることがあります。

これについては、税務署の内規で

保険会社から保険金の支払通知を受けた日に
収益計上するべき

と解説されています。

このため、保険事故が発生した日や、保険会社に
保険金を請求した日、そして保険金が実際に
入金された日に生命保険の保険金を収益に計上
することは間違いですので注意してください。

この取扱いはよく知られていますが、過去の
裁決事例で、保険金収入と損害を個別に
対応させるべき、とした事例があります。
ここでは、災害などに備えて資産に損害保険を
付した場合、その災害などの損害と同時に
保険金の支配請求権が確定するため、
損害と同じタイミングで保険金を
収益計上するべき、と判断されています。

両者の違いとしては、

生命保険と損害保険という保険の種類の違い

が挙げられます。実際のところ、損害賠償金に
関する通達の解説書の記述ですが、損害保険
契約の保険金については、契約に基づいて
支払われるものであらかじめ予測することが
可能であること、そして保険金について支払いを
受けられないことは稀であるため、その保険金の
収入と補填される損害との対応関係が必要になる
と解説されています。

このように、同じ保険でも、その種類によって
収益計上するタイミングが異なりますので
注意が必要です。

それに止まらず、損害保険については、相続税の
計算においてもこの収益計上と同じような
考え方をするため、申告誤りがないように
注意する必要があります。

一例として、東京税理士会の相談事例で
取り上げられていた事例があります。この
事例においては、住宅の火災が発生し、
その火災の1週間後に父が亡くなって、
住宅に対する損害保険の保険金が
支払われた場合の課税関係が解説されています。

ここでは、支払われる具体的な保険金額には
鎮火後の状況によって確定することから、
鎮火後既に保険金請求権が発生していたと
考えられるので、この場合は損害保険の請求権を
相続財産として相続税の申告に含めるべき
と解説されています。

法人税も相続税も同様の考え方をしますが、
権利確定したものは収益ないし相続財産として
計算するという考え方があります。権利確定と
聞くと、「請求」を思い浮かべることがほとんどで、
実際のところ生命保険はこれが基準となります。

しかし、こと損害保険は「請求」ではなく
「資産の損害」の時点が問題になりますので、
生命保険と混同することのないよう、
注意する必要があります。