持続化給付金詐欺が明らかにした税務行政の問題点
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第三百七十四回目。
テーマは、
「持続化給付金詐欺が明らかにした
税務行政の問題点」
です。
制度創設時から、審査が甘すぎるという
批判があった持続化給付金について、
予想通りその不正受給等が報道などで
指摘されています。
そのうち、国税OB元税理士がかかわった事例
については、国税OB税理士制度の
問題点も明らかにしています。
この元税理士は、自分の親族や事務所の
スタッフの親族などを個人事業主と偽る
などして、少なくとも1億円もの不正受給をした
と報道されています。
腹立たしいことに、不正受給した給付金を
事務所の慰安旅行の費用等に使っていたようで、
到底許せる話ではありません。
ここで注目したいのは、このような行為を行った
税理士が、国税OBであることは決して偶然では
ないということです。企業の不正を見つける
と言いながら、その実税務署では裏金を
作っているなど、いい加減な国税組織にいると、
多少法令違反しても問題ないと思うように
なります。
このような風土で育ったので、
この元税理士は国を甘く見たのでしょう。
このように、国税OBの中には
コンプライアンス意識に乏しい者がいますので、
やはり彼らに税理士という法令順守を仕事とする
資格を付与してはいけないのです。
次に、不正受給と疑われていた、競馬の調教助手
などの持続化給付金の申請の問題について
考えてみましょう。
この申請については、それをサポートし、
成功報酬をもらっていたという大阪の税理士
についても大きな批判が寄せられています。
背景には、調教助手は賞金等の関係で月によって
収入が大きく増減するという事情があります。
持続化給付金は原因に関係なく、任意の月の
売上が昨年より減っていれば申請対象に
なりますので、原則このようなケースも
対象になります。
このため、今更になって「コロナ禍で売上が
減った訳ではないため不正受給」である
と言われても、持続化給付金の申請要件は
原因を問わないものですから、何ら問題もない
と考えられます。
このくらい適当な制度にしても、早急な給付を
国が優先させた制度論の話であり、不正受給では
ありません。
持続化給付金についてこの税理士が成果報酬を
取ったり、コロナ禍の影響がない調教助手が
持続化給付金を貰ったりしたことは責められても
仕方ありませんが、それは不当であって
違法とは言えないでしょう。
ただし、これに関連して一つ大きな問題が
あります。それは、給与と事業の区分です。
持続化給付金は事業者が対象で、給与所得者は
原則対象外となります。
このため、調教助手などは給与所得者なので
持続化給付金を申請するなんてけしからん、
といった指摘があります。
しかし、給与と事業は実態で判断されるという
税務の常識を踏まえると、解釈によっては
調教助手も事業者と見ることもできます。
このあたり、本来は暇な国税職員を使うなどして
きちんとした審査をするべきであり、それを
しなかった国の責任はやはり大きいと考えます。