Column/コラム

「300万以下は雑所得」が意味すること

「300万以下は雑所得」が意味すること

「300万以下は雑所得」が意味すること

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第三百七十三回目。

テーマは、

「「300万以下は雑所得」が意味すること」

です。

先日、大きな話題になった税務当局の所得税の
通達に関するパブリックコメントがあります。
年間の収入金額が300万円以下である所得は、
それが納税者のメインの所得でない場合、
特に反証がない限り雑所得に該当する、という
国税の見解が公表されました。

自分の行う商売について、その規模が大きい
と認められる事業所得になるか、それとも
規模が小さいサラリーマンの副業のようなもので
雑所得になるか、所得税の実務上、往々にして
問題になります。

しかし、今後は一義的には300万という基準で
判断されることになるということで、
大きなニュースになりました。

事業所得と雑所得の区分が問題になるのは、
これらの所得の計算上赤字になった場合の
取扱いが異なるからです。事業所得の赤字は
その他の給与などの所得と相殺できますが、
雑所得の赤字は相殺ができません。

このため、収入がほとんど上がっていない、
規模的にどう見ても雑所得にしか見えない
ような赤字の副業を事業所得として
申告することで、その赤字を給与所得などと
相殺する所得税の申告が現状多く見られます。

もちろん、このような申告をすると
税務調査で是正されることになりますが、
事業所得と雑所得の区分について
明確な線引きがなかったため、税務署にとっても
その是正は非常に困難でした。

このため、税務調査の実務では納税者や税理士が
ゴネることで、事業所得と認めさせることが
多くあります。加えて、所得税の申告件数は
膨大ですから、このような申告をする納税者
全員に税務調査をすることは、そもそも困難
という現実もあります。

このような事情を踏まえ、税務署も何か
明確な基準が必要、ということで、
パブリックコメントでは収入金額300万という
基準を打ち出したと思われます。

しかし、十分な税法の知識がなく、かつ
税務署に忖度する裁判所の現実を踏まえれば、
この基準が独り歩きし、300万という基準で
万時判断される可能性があると考えられていました。

このような点を踏まえ、このパブリックコメントに
対しては、その取扱いを批判する意見が国税庁に
数千件も寄せられていました。通常、国税庁の
パブリックコメントに対しては、税が複雑であること
もあって、意見募集するためのパブリックコメントで
ありながら、件数はほとんどありません。

加えて、意見の数が少ないこともあって、国税は
パブリックコメントで寄せられた批判を
無視することが通例です。しかし、この
パブリックコメントは想定以上の批判が
あったため、上記の300万基準が
撤回されることになりました。

具体的には、帳簿書類をつけているかどうか、
で事業か雑を判断する方向性が
示されています。以下、ご参照ください。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC262E60W2A920C2000000/

300万基準よりも明確な基準ですが、その反面
税の考え方からすれば、非常に問題になる
取扱いとなっています。

この点、また別の機会に解説いたします。