Column/コラム

株価評価のパブリックコメントが話題

株価評価のパブリックコメントが話題

株価評価のパブリックコメントが話題

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第三百六十七回目。

テーマは、

「株価評価のパブリックコメントが話題」

です。

以前、非上場株式を譲渡した場合の
時価算定について、注目すべき最高裁判決が
なされました。この最高裁判決では、通例と
なっていた、非上場株式の時価評価について
定められた、国税の通達に疑義があったため争われたものです。

この最高裁判決は、最終的には
国が勝っていますが、この判決を踏まえ、
通達をより分かりやすくする必要がある、
ということで国税は通達の改正を行いました。

この通達の改正の際、国税は
パブリックコメントを行い、広く通達の
改正案について意見募集しましたが、
その意見募集に対する国税の回答内容に対し、
従来の通説を不利に覆す内容が含まれていました。

専門的な話になるため詳細は割愛しますが、
大・中・小に分けられる会社の規模に応じて
計算される「斟酌率」という割合が問題になっています。

従来、国税の通達ではここまで明確には
されていなかったものの、一定の株主は
この斟酌率を実態に関係なく小会社として
計算するべき、と言われていました。しかし、
今回のパブリックコメントで国税は、
「斟酌率は会社の実際の規模で判断する」と回答しています。

斟酌率を実際の規模で判断するとなると、
従来の通説の計算よりも株価が大きく
評価されますので、税負担の増加につながります。
困ったことに、国税は先の取扱いについて、
(改正前の通達も含めて)通達を読めば内容は
明らかである、と回答しています。

国税の回答を前提とすると、斟酌率の計算の
通説がそもそも間違っていた、ということに
なりますから、過去の株価評価も間違っていた
ということになり、この国税の回答の通りの
計算を行う必要があって遡及的に課税される
のではないか、といった疑問が生じています。

この点、改正した通達を用いて遡及的に課税した
課税処分が違法とされた最高裁判決があるため、
原則問題にならないはず、といった指摘も
ありますが、この指摘は個人的には楽天的過ぎると考えます。

大きな問題になっている販売用マンションの
消費税の裁判などを見ればわかる通り、国税は
見解を変えた事実を隠蔽して、遡及的に多額の
税金を課税するという卑劣な行為を行う
組織でもあるからです。このような組織ですので、
最高裁判決など関係ないなどと無視して、
遡及的に課税する可能性はゼロではないでしょう。

とりわけ、販売用マンションの消費税の裁判と
異なり、斟酌率の取扱いについては、ただ
一般的に言われていた通説が違う、
ということですから、国税が何らかの見解を
示したにもかかわらず、その見解を変えた、
という訳ではありません。

となると、国税が遡及的に課税したとしても、
その非を問うのは非常に難しいと考えられます。
このような事情がありますので、国税には
慎重で納税者に配慮した処理をお願いしたいと思います。