Column/コラム

お尋ね文書と重加算

お尋ね文書と重加算

お尋ね文書と重加算

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第三百六十六回目。

テーマは、

「お尋ね文書と重加算税」

です。

税務調査の手続き法制化が実現して税務調査が
やりづらくなったこともあって、
近年は税務署がお尋ね文書を送って
申告内容を確認するといった処理も
増えてきました。

このお尋ね文書は、
納税者の任意の協力を求める行政指導の一環で
行われるので、回答義務はありません。

ただし、回答しないと調査が行われる、
といった都市伝説もありますから、
多くの納税者はそれを無視する
ことなく回答しています。

よく言われる話ですが、税務署の実務としては、

回答した者の回答内容を見て、
税金が取れそうなら、
原則として税務調査に切り替えて税金を取る

という後出しじゃんけんです。

税務調査にされると加算税という
ペナルティーも課されて不利益が
大きくなりますが、税務署は全く配慮しません。

一方で、お尋ね文書に回答があったかどうか、
税務署の管理は甘いので、
回答しなければ特に目立つことなく
税務調査が行われない、
といった事態が起こります。

慎重な判断が必要ですが、回答しないか、
若しくは回答するにしても加算税が
課税されないよう修正申告をしてから、
というのがお尋ね文書に対する
正しい方法になります。

とりわけ、近年は回答のリスクが
非常に大きくなっていますので、
回答するなら細心の注意が必要です。

相続税の相続財産の内容に関する
お尋ね文書に対し、
相続財産の記載もれや虚偽記載がある場合、
重加算税の対象にするという処分が
多くなされているからです。

税務署からすれば、お尋ね文書に
正しい内容を書かないのは、
財産を隠して税金をごまかすことと同じ、
という理解なのでしょうが、
このような考えはさすがに無理があります。

上記の通り、お尋ね文書に
回答するかどうかは納税者の任意である以上、
どこまで協力するかも任意ですから、
仮に記載漏れや虚偽記載があったとしても、
それを申告すべき相続財産の隠ぺいや
仮装にあたる、と判断するのは無理があります。

実際のところ、お尋ね文書に基づいて
重加算税を課税した事案のほとんどで、
後日裁判や裁決が行われた場合、
重加算税の課税は違法とされています。

しかし、税務署は過去の過ちに
学ばない組織ですので、あきらめることなく、
現在も重加算税を課税しようとしています。

この点、法人税と異なる相続税の性格も
影響していると思われます。

相続税の重加算税は、意図的に相続財産を
隠ぺいしたような場合に課税されますが、
帳簿などの記録は存在しませんので、
ミスで申告がもれたのか、
意図的に抜いたのか、その判断が難しい

という状況です。

結果として、相続税は重加算税を
取るのが難しいことを踏まえ、
証拠としやすいお尋ね文書を基礎として、
重加算税を課税しようとしていると考えられます。

いずれにしても、お尋ね文書の記載は
慎重に行う必要があります。