Column/コラム

会計不正の事例~原価の付替え~

会計不正の事例~原価の付替え~

会計不正の事例~原価の付替え~

金曜日を担当していますセブンセンスグルー
プ(SSG)公認会計士の髙橋です。

金曜担当の私からは、会計・財務、税務、監
査、内部統制関連の基礎・Tips等をお伝えし
ます。

127回目の今回は、会計不正の手法である原
価の付け替えと架空発注を利用した会計不正
のニュースがありましたのでお伝えします。

<西松建設で不適切会計9億円 工事原価を付け替え>
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC036HL0T00C22A8000000/
日経電子版 2022年8月4日

<西松建設 イオンモール建設で9億円不正会計 所長を諭旨解雇処分に>
https://bunshun.jp/articles/-/56341
週刊文春 8月11日号

要約すると・・・・、

・東証プライム市場上場の西松建設は2014年
から21年にかけて、6カ所の施工現場で当時
の所長1人が計9億円の不適切な会計処理をし
ていたことを発表

・50代前半の所長が担当する工事で、巨額の
損失が発生していたことを隠すため、4億5千
万円を下請業者に肩代わりさせていた

・予算に余裕のある別の5つの現場で本来よ
り高い原価で工事を発注し、当該下請業者へ
の返済に充てていた

・不正が発覚した所長には、7月15日付で
「諭旨解雇」「退職金10%減額」という処分
が下された

というもの。

以前、第116回(2022/5/20)でご紹介した会
計不正の手法である原価の付替えが実際に行
われていた、という記事です。

上記記事を簡単な例にすると、Aという工事
で4億5千万円の赤字が出るので、下請業者へ
の4億5千万円の支払を行わず、

予算に余裕のあるBという別の工事で、通常
より4億5千万円高く下請業者に発注し、Aの
損失をBの予算内で吸収しようとした、

ということかと思われます。

A工事とB工事が同じ事業年度中に終了すれば、
会社における損益は相殺されて最終利益には
影響が出ませんが、

異なる事業年度に終了する場合には、損失の
先送りになる場合もあり、また、減損損失の
回避手法にもなり得るため、

原価の付替えは会計不正の手法の1つと言え
ます。

またこの所長は、架空発注を何度も行う間に
モラルが麻痺したようで、下請け業者への支
払い以外にも、

家族旅行や自宅の改修工事等、私的な流用に
まで行っていたとの事です。

ここまでしてしまうと、会社のトータル利益
も減らすこととなるため、業務上横領罪や詐
欺罪等となってしまうと考えられます。

(会社は騒ぎを大きくしたくないため、諭旨
解雇としたようですが・・・)

当該所長は、大型事業をいくつも手がけ、社
内でも期待のエースだったそうです。

いくらエースで信頼に足る人物であっても、
不正の動機と機会が与えられてしまった場合
には

不正に手を染めてしまうということがわかる
事例ではないでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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