Column/コラム

内訳書の記載と税務調査

内訳書の記載と税務調査

内訳書の記載と税務調査

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第三百五十三回目。

テーマは、

「内訳書の記載と税務調査」

です。

裁決事例を研究していて
びっくりしたものの一つに、
会社の役員が非常勤役員に当たるか否かが
問われた事件があります。

非常勤役員については、常勤役員に比して
高額な報酬が認められないと考えられているため
国税にとって都合がいいのですが、
非常勤と常勤の区分については
実態に即した判断になります。

しかし、この裁決事例においては、
申告書に添付した勘定科目内訳書の
役員給与の役員の欄に、「非常勤」と
マルをしたことを重要な理由として、
国税は非常勤に当たると判断し、
更正処分をしています。

繰り返しですが、非常勤と常勤の区分は
勤務実態で決まりますので、勘定科目内訳書の
記載内容で決まるなどということはあり得ません。

にもかかわらず、こんな安直な理由で
非常勤役員と判断をするのが近年の
税務調査の傾向です。何より、
法律に則った課税処分かどうか、
国税の内部で審査する「審理担当」も、
このような根拠が甘い課税処分について
合法と判断したかと思うと、一昔前の、
税務署の審理担当の厳しさを
知っている私とすれば、非常に驚かされます。

審理担当も他の国税職員と同様、
レベルが低下しているのでしょう。

「勘定科目内訳書の記載が不十分である
ことだけでは問題にならない」といった国税の
担当官の解説を、最近でも税務雑誌などで
よく目にします。

実際のところ、私の現職時代を振り返っても、
勘定科目内訳書の記載内容は参考程度という
感覚しかありませんでした。

記載内容にケチをつけて、それを証拠に
税金を取るなどといったことはありませんでした。

ところで、このような安直な課税を目にすると、
現職時代に上司から「調査官失格」として
厳しく叱責された私の苦い経験を思い出します。

当時、他の税務署の調査官が入手した情報が
私の手元に流れてきて、その内容からすれば
私の調査先に多額の売上の計上もれが想定されました。

このため、
「この会社、売上申告してないですよ。」
と上司に報告しましたら、

「あなたが自分の目で事実確認していないのに、
なぜ調査先が売上を計上していないと
断言できるのか。その情報は誤っているかも
知れないじゃないか。」

と厳しく怒られました。

国税では「税務調査は事実認定が全て」と
言われており、追徴税額など自分の手柄は
足で稼げ、と言われます。

調査官が自分の目で事実関係を確認することが
税務調査では最も重要になるのに、安易に
流れてきた情報を信用して、足を使わない
私の態度は調査官失格、という意味で
その上司は厳しい指導をしたのです。

役員の勤務実態の確認が甘い、上記のような
更正処分が容認される近年の税務調査も
これと同じで、税務調査失格と言わざるを得ません。

なお、この更正処分は、審判所が役員の
勤務実態を確認した上で違法とされています。

安直な税務調査で同じ目に合わないよう、
事実認定の重要性を調査官は考えるべきでしょう。