Column/コラム

リモート調査の合法性

リモート調査の合法性

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百十八回目。

テーマは、

「リモート調査の合法性」

です。

とある税務雑誌の情報ですが、国税局の調査部が管
理している法人の税務調査では、臨場型リモート調
査が行われることもあるようです。

これは、コロナ禍で行われた取り組みで、会社に臨
場はするものの、対面であれば感染のリスクがある
ため対面はせず、調査官が会社の会議室などを借り
た上で、実際のやり取りは会社のWEB会議システ
ムを通じて行う、という調査です。

なお、今後は法人の規模を問わず、税務署で管理し
ているような中小零細企業についても臨場型リモー
ト調査を行う方向性も示されています。

さらに一歩進んで、将来的には完全リモートで税務
調査を行うことも考慮されているようです。なお、
会社に出向くことなく、国税局や税務署の中で税務
調査を行うのが完全リモート調査です。

しかし、臨場型リモート調査にしても、完全リモー
ト調査についても、税務当局は情報漏えいの問題を
非常に気にしています。

具体的に申し上げると、現状の臨場型リモート調査
の要件として、

「法人が通常業務で使用しているWEB会議システ
ムを利用する」

「法人が管理・支配する場所等で、法人が使用する
機器・接続環境を利用」する

といった条件が挙げられています。

システムにしても機器にしても、調査先で使ってい
るものを税務当局が使う訳ですから、万一税務調査
の情報が漏えいしたとしても、税務当局の責任では
ないといった状況を作ろうとしていると思われます。

実際、上記の要件のほか、臨場型リモート調査につ
いては、「税務調査では機密性の高い情報のやり取り
が行われることや、システムの脆弱性に起因するリ
スクがあることを(注:税務調査を受ける)法人が
理解」しなければならない、という要件も挙げられ
ています。

こういう訳で、リモート調査については、万一の情
報漏えいのリスクを、私たちが負わなければならな
いのです。ここまでして協力すべきか、検討する必
要があります。

ところで、そもそも論なのですが、リモート調査に
ついては、国税職員の守秘義務に違反することにな
り、違法性が高い税務調査と考えられます。

このことは、税務調査の録音を考えていただくと分
かります。税務調査を録音することは禁止されてい
ますが、それはレコーダーに記録した税務調査の情
報が仮に漏洩すると、国税職員の守秘義務に違反す
るためと説明されています。

すなわち、税務調査の情報漏えいのリスクを残すま
ま税務調査をするとなれば、国税職員の守秘義務違
反になる訳で、本来リモート調査は容認されるもの
ではないのです。

このようなことを申し上げると、「納税者が、漏えい
もあり得ることを承諾すれば、違法ではない」とい
う反論もあるでしょう。

しかし、そうなると、税務調査の録音についても容
認せざるを得ない訳で、また新しい問題が発生する
可能性があります。

税務当局として、リモート調査を進めるのであれば、
この辺りの問題をきちんと解決する必要があり、
それを放置したままでは、
大変な問題が生じると考えています。