アーンアウトは雑所得か
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第四百十七回目。
テーマは、
「アーンアウトは雑所得か」
です。
実務上、その取扱いが明確ではなく、判断を悩ませる
取引の一つにアーンアウト条項があります。アーン
アウトはM&Aでよく使われる条項の一つで、買収
先の会社の買収代金について、将来の利益状況など
に応じ、その金額を増減させる条項を意味します。
企業を買収する時の金額については、会社の将来の
利益を見積もるなどした上、DCFなどの所定の評
価方法が理論上はあると言われます。しかし、未来
は誰にも分かりませんので、理論上の評価金額が、
本当に正しい買収金額と言えるのか疑問が残ります。
例えば、現状のコロナ禍については、過去、誰にも
予測できなかったはずです。
となると、コロナ禍の前に買収した企業の価値は、
コロナ禍を踏まえていないことから実際よりも高く
評価されている可能性が大きいと言えます。
一方で、その逆に将来の利益が想定より大きい場合
もあるはずです。この場合、売手企業にとっては、
買収されたタイミングではもっと高い金額を買手企
業に請求できたはずで結果として損をした、という
ことになります。
こういう訳で、将来の目標などに照らして買収金額
を事後的に増減できれば都合がよく、とりわけM&
Aの評価は将来状況で変わることから、アーンアウ
ト条項が設けられることが多いのです。
ここで問題になるのは、M&Aで株を買収先に売っ
た個人について、アーンアウト条項により追加で取
得したお金がどの所得区分に該当するか、というこ
とです。
株を売った、という点に着目すれば譲渡所得になる
はずですが、譲渡所得は譲渡したタイミングで申告
が必要になります。
しかし、アーンアウト条項による追加代金を取得す
るのは、譲渡してから数年経過した後になるため、
理論的には譲渡した年分に遡って申告をやり直す、
といった対応が必要になるはずです。
このような修正申告は、税務的にはイレギュラーで
すので、果たしてこのような処理を行う必要がある
のか、疑義があります。
これに関し、最近、とある税務雑誌において国税の
見解が示されましたが、そこでは譲渡所得ではなく
原則として雑所得になると解説されています。
雑所得であれば、追加代金をもらったタイミングで
申告すればよいので、上記の問題は生じません。し
かし、その一方で譲渡所得より雑所得は税率が高い
ため、納税者にとっては不利な取扱いになります。
アーンアウト条項による追加代金も譲渡代金ですか
ら、本来は譲渡所得が妥当と個人的には考えていま
す。しかし、国税としては雑所得と判断している模
様であり、譲渡所得で申告すると課税される恐れが
大きいことから、慎重な対応が必要です。