無申告なら経費は認められなくなる?
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第四百三十四回目。
テーマは、
「無申告なら経費は認められなくなる?」
です。
2023年分の申告からスタートしている改正です
が、「証拠書類のない簿外経費への対応策」という規
定があります。
これは、不正な申告を行ったり、申告をしなかった
りした場合に適用される制度で、これらの場合には
納税者の一定の資料や国税当局が行う反面調査で存
在が判明しない経費のうち一定のものを、法人税や
所得税の経費にしないとするものです。
不正な申告や無申告は許されるべきものではないた
め厳重な調査が必要になりますが、一方でこれらの
申告に対する税務調査は国税当局にとって非常に労
力がかかるものです。
特に労力がかかることの一つに、簿外経費と言われ
る経費の存在があります。
これは、文字通り帳簿に記載されていない経費を意
味しますが、これらの経費についても事業に関する
経費であれば、現状は法人税や所得税の経費として
認められます。
特に、経費についても国税当局が立証する必要があ
りますので、帳簿に書いていない経費についても税
務調査をし、その結果判明した経費については、国
税当局は経費として認めなければなりません。
しかし、そうなると社会悪である不正な申告や無申
告をした納税者が簿外経費を主張することで税金を
下げることにもつながり、問題があることも事実で
す。
悪質な納税者であれば、架空の簿外経費をでっちあ
げて、国税当局の負担を大きくさせるようなことも
行う可能性も指摘できます。
これらの点を踏まえ、本制度においては、売上原価
や直接販売費などを除いた一定の簿外経費(間接経
費)について、簿外経費を主張することを制限する
ことされています。
具体的には、帳簿書類やその他の原始記録、そして
国税当局の反面調査などで存在が判明しない間接経
費については、原則として税金の計算上の経費と認
められないとされています。
無申告など悪質な税務調査に従事し、簿外経費に係
る税務調査の大変さが分かる私自身の経験からすれ
ば、これは一理ある改正と思います。
その一方で、本制度の問題を指摘する声が非常に大
きいことも事実です。
この理由として、無申告の納税者は、帳簿書類の保
存がそもそもないことが挙げられています。
ストレートにこの改正を適用するとすれば、無申告
者は帳簿書類がなく証明ができないため原則として
間接経費がすべて認められず、膨大な税金が課税さ
れる恐れがあると指摘されています。
確かに、反面調査で判明すれば経費は認められると
されていますが、反面調査をするか否かは国税当局
の判断になりますので、反面調査をしてもらえず、
間接経費が一切認められない可能性はあり得ます。
こういう訳で、無申告に対しては非常に厳しい制度
ができるという印象があります。
しかし、仮に無申告であったとしても、国税当局か
ら調査の予告が入る前に自主的に期限後申告をすれ
ば、法令上はこの規定の対象にならないとも解釈で
きます。
無申告はもちろん許されませんので、一日も早く申
告するよう努める必要があります。