不正の兆候に大きな男女差
おはようございます。
金曜日を担当しています、セブンセンスグ
ループ(SSG)公認会計士の髙橋です。
171回目の今回は、不正行為について深く掘
り下げ、そのスキーム、犯行者、隠ぺい工作方
法、発見手段、兆候についてまとめられた報告
書についてご紹介します。
相変わらず、会計不正に関する報道は連日と
言って良いくらい行われています。
今年の初めに東京商工リサーチが発表した
「不適切な会計・経理の開示企業」調査結果
によると、2022年に不適切な会計・経理を開
示した上場企業は55社で、
その中でも経理や会計処理ミスなどの「誤
り」が最も多く、次いで子会社での不適切会
計処理などの「粉飾」、着服横領が続きまし
た。
<2022年度の「不適切会計」 開示は55社、56件 建設業、不動産業、運輸・情報通信業が増加>
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1197615_1527.html
東京商工リサーチ
このような背景を踏まえ、ACFE(Associatio
n of Certified Fraud Examiners)が公表し
た「職業上の不正と濫用に関する国民への報
告書」をご紹介します。
この報告書は、職業上の不正行為についての
深い洞察を提供しています。
<職業上の不正と濫用に関する国民への報告書>
https://www.acfe.jp/study/download-library/
一般社団法人 日本公認不正検査士協会:ACFE JAPAN
96ページある報告書です。
報告書からは、不正行為のスキームでは、資
産の横領が最も一般的で、次いで腐敗(贈賄
やキックバック)となっています。
犯行者の大半は男性で、教育レベルは大学卒
業以上が多く、彼らの大部分は経営者または
上級管理職となっています。
不正の発見手段としては、通報や内部監査が
最も効果的で、不正の兆候としては、生活ス
タイルの変化や異常な行動が挙げられていま
す。
不正の兆候で興味深い点として、男女で不正
の兆候が大きく異なっているという点です。
男性に多い不正の兆候としては以下の3つが
上位となっています。
1位:業者/顧客との異常に親密な関係(23%)
2位:汚い手を使ってでも成績を上げようとす
る態度(13%)
3位:高圧的態度・脅し(13%)
これに対して、女性に多い不正の兆候として
は
1位:分不相応な生活(44%)
2位:経済的困窮(34%)
3位:近時の離婚、家庭内トラブル(13%)
なんとなく、納得する部分も多いかもしれま
せん。
報告書には男女含めた全体の兆候として「8
つの主な警告サイン」が記載されており、
85%の不正実行者は少なくとも1つはその兆
候が出ていたということです。
これらの兆候は、以前ご紹介した不正のトラ
イアングルのうちの一つである「動機」に該
当する部分が多いと思われます。
不正の実行者本人は意識をしていなくとも、
そのような兆候が表面に出てしまっているこ
とが多いということが、この報告書から読み
取れます。