一部未分割にご用心
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第四百三回目。
テーマは、
「一部未分割にご用心」です。
相続税の申告で、
必ず適用を考えなければならない制度の一つに
小規模宅地の特例という制度があります。
この小規模宅地の特例は、
被相続人などが居住したり
事業の用に供したりしている宅地について、
一定の要件を満たせば、
一定の面積の範囲内で最大で80%その宅地の
評価額を減額できるという特例です。
80%も評価が変わる話ですから、
適正に適用しないと相続税に
大きな差が生じることになり、
適用ミスは税理士損害賠償の対象にもなります。
税務ではよくある話ですが、
このような大きな節税制度については、
適用要件が非常に細かくかつ複雑です。
私自身もよくこの制度について
適用有無について質問を受けますが、
致命的なミスをしやすい手続きがあります。
それは、申告期限で
一部未分割であった場合の取扱いです。
小規模宅地の特例の手続きで
重要なポイントが二つあります。
一つは、未分割の宅地については
適用されないということです。
このため、申告期限までに
分割されていない宅地は
当初の申告ではこの適用を受けられません。
なお、一定の手続きをした上で、
3年内に遺産分割が成立したような場合には、
後日その適用を受けられるとされています。
次に、小規模宅地の特例の対象になる宅地が
複数あった場合の手続きです。
先の通り、小規模宅地の特例には
面積制限がありますので、それが複数あれば、
どの宅地を選ぶか選択する必要があります。
ただし、小規模宅地の特例は
適用を受ける宅地を相続した人が
メリットを受けることになりますので、
その選択上特例を受けない相続人は
不利益を受けることになります。
このため、特例の対象になる宅地が
複数ある場合には、それを相続した
すべての相続人が、小規模宅地の特例の選択に
同意した書類が必要とされています。
ここで問題になるのは、
特例の対象になる宅地が複数あって、
遺産分割が確定しているものと、
遺産分割が確定していないものとがある場合です。
後者は未分割なので、
先の通り分割するまで特例を受けられません。
それに止まらず、
未分割ということはその宅地を相続人全員が
共有しているということも意味します。
そうなると、特例の対象になる宅地を
相続人全員が持っていることになる訳ですから、
遺産分割が確定している宅地について、
小規模宅地の特例を受けようとする場合には、
相続人全員の同意書が必要になります。
相続人間で争いがあるため未分割になる訳で、
上記のケースでは相続人全員から同意書をもらう、
というのは難しいです。
困ったことに、未分割のものについては
一定期間の分割まで待ってもらえますが、
遺産分割が確定しているものは
待ってもらえません。
となると、同意書がないという理由だけで
特例を受けられない場合が生じます。
このような問題が生じないよう、
「争族」対策を早くから行う必要があります。