SaaS導入にかかる初期設定費用の会計処理
おはようございます。
金曜日を担当しています、セブンセンスグ
ループ(SSG)公認会計士の髙橋です。
金曜担当の私からは、会計、経営、財務、税
務、監査、内部統制関連の基礎・Tips・ニ
ュース等をお伝えします。
165回目の今回は、今では一般的に普及して
いるクラウドサービスのようなSaaS導入に関
する会計処理、特に初期設定費用についての
会計処理についてお伝えします。
SaaS(Software as a Service)はソフトウ
エアを企業等のシステム自体に導入する、い
わゆるオンプレミス型のソフトウエアではな
く、
クラウド上で提供されたソフトウエアを導
入・使用するもので、昨今のソフトウエアと
しては一般的なものとなっており、
今や企業にとって避けて通れない選択肢の一
つとなっています。
では、SaaSを導入する際に発生する初期費用
の会計処理(税務上ではなく企業会計上)に
ついては、具体的にどのように行われるので
しょうか。
たとえば、特定の企業のビジネスモデルに対
応するための独自の機能を追加する場合や、
既存の業務プロセスを反映するためにSaaSを
カスタマイズする場合、これらは「企業固有
のセットアップ」と考えることができます。
それについては、日本会計士協会から以下の
ような研究資料が公表されています。
<会計制度委員会研究資料第7号「ソフトウ ェア制作費等に係る会計処理及び開示に関す る研究資料 ~DX環境下におけるソフトウェ ア関連取引への対応~」及び「公開草案に対 するコメントの概要及び対応」>
https://jicpa.or.jp/specialized_field/files/2-11-7-2-20220630.pdf
こちらの研究資料には
・初期設定費用、カスタマイズ費用について
は、我が国の研究開発費等会計基準における
ソフトウエアの定義を満たすが、
自社利用目的のソフトウエアに対する支配を
有していないと考えられ、資産計上は出来な
いと考えられる。
・一方で、初期設定費用は、将来のキャッシ
ュ獲得に貢献する経済的資源であり、そこか
ら生み出される便益を享受出来るため、
当該経済的便益に対しての支配が存在してい
る可能性があると思われる
・よって、SaaSにかかる初期費用は資産性の
要件を満たす可能性がある
と記述されています。
要は、現行の会計基準におけるソフトウエア
の資産計上の要件は満たさないが、資産性の
要件は満たすので、
ソフトウエア以外の資産(前払費用等)で計
上することが考えられる、という内容です。
以上のように、SaaSにおける毎月の利用料は
当然に費用計上されますが、
SaaSを導入する際の初期設定費用(セットア
ップ費用等)については、その将来の経済的
便益があると考えられる場合には、
資産性があると考え、前払費用等として計上
すべきということをこの研究報告は示してい
ます。