「タクシーでも会社名義の領収書が必要になる」は本当か?
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第三百六十五回目。
テーマは、
「「タクシーでも会社名義の領収書が必要になる」は本当か?」
です。
会社がフリーランスや士業に支払う報酬の中に、
交通費などの実費が混ざっていたとしても、
その実費部分についても原則として
報酬の一部として源泉徴収の対象になります。
しかし、報酬とは別に請求する交通費の実費まで
税金を取るというのはさすがにひどい話ですから、
その見直しが必要という声は大きいです。
この点、本連載でも紹介しましたが、とある
権威ある税務雑誌の記事で、交通費の実費について、
1 依頼主である会社名義の領収書を取る
2 その領収書と引換えにフリーランスや士業が会社と実費精算する
この二つのステップをとれば、源泉徴収の
対象にはならないと解説されていました。
国税庁に取材した記事と思われますので、
国税がホームページなどで明確な見解を
示した訳ではないものの、このように処理して
問題ないようにも考えられます。ただし、
現在においてもまだ明確な見解が出ていません
ので、慎重な対応が必要です。
話を戻しますが、先日、この記事の続報として、
より具体的な事例が解説されていました。
そこでは、タクシー料金に関する事例が
掲載されており、タクシー料金についても、
会社名義の領収書を取る必要があると解説されていました。
タクシーに乗って運転手にわざわざ会社名義の
領収書を要求する、といったことはまず
ありませんので、唖然とする解説です。
タクシーに限ったことではありませんが、
近年は領収書を切ってもらったとしても、
名義を空欄にしたリ上様としたりすることも
ほとんどで、支払先に領収書の名義を
書いてもらうことは多くないでしょう。
頼んだことがないのでおそらくですが、
タクシーの運転手に会社名義の領収書を切って、
とお願いしても、タクシーから出る領収書は
レシートで、名義を印字する場所もない
と思いますから、手書きで領収書を
書いてもらうようお願いしないといけない、
といった事態になりかねないと思われます。
加えて、近年はハンコを廃止するべきと叫ばれる
など、コロナ禍もあってより一層ITによる
業務効率化が叫ばれる時代です。
こんな時代に、わざわざ依頼主である
会社名義の領収書をもらえ、というのは
全くのナンセンスです。こういう訳で、領収書の
名義にこだわるこのような取扱いには違和感しかありません。
本来は交通費部分も源泉徴収の対象である
ことから、実費精算であることを明記するために
領収書の名義は重要になる。このように
言いたいのでしょうが、実際のところ
調査官はそこまで名義には拘りません。
支払った事実があるかどうかが重要だからです。
加えて、交通費部分についても源泉徴収の
対象になる、という取扱いを知らない調査官も
多いです。そして、課税もれになる税金も
大きくないので国税もあまり厳しくありません。
このため、もっと柔軟な取扱いを認める旨、
国税が明確な見解を示すべきと考えられます。