「事業の用に供した日」の意義
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第三百五十九回目。
テーマは、
「「事業の用に供した日」の意義」
です。
建物などの固定資産については、
減価償却費を計上することで
毎期少しずつその取得価額を費用にします。
ここで問題になることとして、
減価償却費を計上できるスタート地点である、
「事業の用に供した日」の解釈があります。
固定資産を取得しても、実際にビジネスに
使わないと減価償却費を認めるべきではない、
という考え方から、取得日ではなく実際に
事業に使用した「事業の用に供した日」から、
減価償却することになっています。
パソコンなど、取得した日からすぐに使える
ものであっても、例えばレンタル用に車を
買った場合などは疑義が生じます。
取得した車は使えるものの、
借手がつかなければ、事業に使ったとは
言えないのではないか。
このような疑問が浮かびます。
この点、国税の内規を見ますと、
「事業の用に供した日」とは、
①資産の属性に従い、
②本来の用途用法のとおり現実に
使用を開始した日を意味する、
と解説されています。
捕捉しますが、①の資産の属性とは、
固定資産における資産の区分、
具体的には税法で設けられている
機械装置や器具備品など、固定資産を
細分化した区分を意味すると思われます。
先の通り、パソコンなどの器具備品は
取得するとすぐに使えるものが多いですが、
反面、超高額な機械装置の中には、
試運転などをするまでは本格的に
使えないものもあります。即ち、資産の区分
によって、「事業の用に供した日」の
判断が変わる場合があります。
これに関し、太陽光発電設備とその
フェンスについて、「事業の用に供した日」の
判断が問題になった裁決があります。
国税は、フェンスは太陽光発電設備のために
設けられるもので、単独では機能を発揮しない
とした上で、両者を一体の「機械装置」と捉えました。
フェンスについても「機械装置」の一部
ですので、発電設備の減価償却と同様に、
実際に発電設備が稼働した日が
「事業の用に供した日」であると国税は主張しています。
しかし、この裁決事例では、フェンスは
「機械装置」である発電設備ではなく、
「構築物」という別の資産
と判断しています。
発電設備が実際に稼働しなくとも、フェンスは
建築されれば太陽光発電設備の盗難などを
防止するという役割を果たすことができますので、
そのタイミングが「事業の用に供した日」であるとされたのです。
この判断は、上記②にも影響します。
資産の区分に応じた本来の役割が
重要になりますので、先のレンタルの
車についても、レンタルできる状況に
ありさえすれば、レンタルという本来の役割を
果たすことができます。
このため、借手がいなくてもその車を顧客に
レンタルできる状態になった日が
「事業の用に供した日」になります。
少し難しいですが、資産の本来の役割は
何かを踏まえながら、この点慎重に判断する必要があります。