Column/コラム

東先生の人事労務相談室「カスタマーハラスメント(カスハラ)への対応策」
2025.01.29
人事労務

東先生の人事労務相談室「カスタマーハラスメント(カスハラ)への対応策」

東先生の人事労務相談室「カスタマーハラスメント(カスハラ)への対応策」

社会保険労務士の東先生が、これまでの豊富な経験をもとに、人事労務に関するあらゆる質問にわかりやすくお答えします。ハラスメントや労務管理の課題など、職場環境の改善に直結するトピックスが満載です。これを読めば、よりよい職場環境づくりに向けて、すぐに役立つ知識を得ることができるはず!今回はどのような質問に答えてくれるのでしょうか?教えて東先生!

質問者
質問者

「カスタマーハラスメントのニュースが続き社員からも不安の声が…
事例や対策をお伺いしたいです。」

カスタマーハラスメントは
社内ルールの取り決めや環境整備が非常に重要です!

東先生
東先生

カスハラの定義と労務士の役割

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客が企業やその従業員に対して不法行為や迷惑行為を繰り返すことを指します。これらの行為は、従業員の精神的・肉体的負担を増大させ、職場環境の悪化を招く重大な問題です。カスハラの具体例としては、過度なクレーム、暴言、威圧的な態度、さらには暴力行為などが挙げられます。

カスハラの解決には、法的手段が必要となる場合が多く、弁護士への相談が適切です。しかし、従業員の保護や職場環境の改善といった観点からは、社会保険労務士(社労士)が相談を受けるケースも増えています。実際、私たちの事務所にもカスハラに関する相談や、カスハラ対策の研修依頼が増加しています。

社労士は、労働者の安全と健康を守るための職場環境整備や、労務管理に関する専門知識を持っています。そのため、カスハラ問題に対しても、従業員を守るための適切なアドバイスや、企業内での対策の立案・実施をサポートすることができます。

法的整備と企業の責任

カスハラ問題に対する社会的な関心が高まる中、法的な整備も進んでいます。特に、2025年4月から施行される「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」は、全国で初めてカスハラを違法行為として明確に位置づけるものとして注目されています。

この条例では、カスハラの定義や防止に関する基本理念、都や事業者、就業者、顧客等の責務が明確化されています。具体的には、事業者にはカスハラ防止のための措置を講じる責任があり、就業者の安全と健康を確保するための環境整備が求められています。

企業は、このような法的動向を踏まえ、カスハラに対する対策の強化が急がれます。具体的には、従業員が安心して働ける環境を提供するための就業規則の見直しや、カスハラ発生時の対応マニュアルの作成、従業員への教育・研修の実施などが挙げられます。

また、カスハラに関する専門的な相談窓口を設置し、従業員が問題を抱えた際にすぐに相談できる体制を整えることも重要です。これにより、問題の早期発見・解決が可能となり、従業員の負担軽減や職場環境の改善につながります。

具体的な対策と従業員保護の取り組み

カスハラ対策を効果的に進めるためには、以下の具体的な取り組みが必要です。

  • クレームとカスハラの線引き
    単なるクレームとカスハラに該当する迷惑行為の区別を明確にし、社内で事例を共有する体制を構築します。これにより、従業員が適切に対応できるようになります。
  • 対応マニュアルの作成
    カスハラ発生時の対応手順を定めたマニュアルを作成し、従業員に周知徹底します。これにより、現場での迅速かつ適切な対応が可能です。
  • 教育・研修の実施
    従業員の対応力を高めるため、定期的にカスハラ対策の研修を実施します。これにより、従業員が自信を持って対応できるようになります。
  • 監視カメラの設置
    店舗などの現場に監視カメラを設置し、録画していることを掲示することで、カスハラ行為の抑止力とします。これにより、未然に問題を防ぐ効果が期待できます。

さらに、クレーム対応に不備があると、初期段階では単なるクレームであったものが、次第にカスハラに発展するケースもあります。そのため、クレームの中に含まれるサービスや商品の改善点を適切に抽出し、社内で共有・改善する体制を整えることが重要です。

これらの取り組みを通じて、従業員をカスハラから守り、健全な職場環境を維持・向上させることが可能となります。企業は、法的整備の動向を注視しつつ、積極的に対策を講じる姿勢が求められています。

まとめ

カスタマーハラスメントは、従業員の安全と健康を脅かし、職場環境を悪化させる重大な問題です。しかし、企業が適切な対策を講じ、従業員を守る体制を整えることで、トラブルを未然に防ぎ、健全な職場環境を維持することが可能です。2025年4月施行の「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」をはじめとする法的整備の流れに合わせて、対応マニュアルや研修、相談窓口の整備など、具体的な取り組みを進めていきましょう。従業員が安心して働ける環境を提供することが、企業の信頼性を高め、持続的な成長を支える鍵となります。