東先生の人事労務相談室「採用前の事前アンケートがおすすめ!」
社会保険労務士の東先生が、これまでの豊富な経験をもとに、人事労務に関するあらゆる質問にわかりやすくお答えします。ハラスメントや労務管理の課題など、職場環境の改善に直結するトピックスが満載です。これを読めば、よりよい職場環境づくりに向けて、すぐに役立つ知識を得ることができるはず!今回はどのような質問に答えてくれるのでしょうか?教えて東先生!
セブンセンス社会保険労務士法人
特定社会保険労務士 代表社員
「採用後、欠勤が続きトラブルになる社員が後を絶ちません。対策を教えてください!」
可能な限り、事前確認を行うようにしましょう。
そこで、今回は「事前アンケート」をご紹介します!
よくあるトラブルと回避の難しさ
入社後のトラブルは様々なケースがありますが、ご質問の通り、従業員が入社後すぐにメンタル不調で休むケースや、家族の事情で頻繁に休んでしまい業務に支障が出てしまうというケースは非常に多くあります。
これらのケースの多くは、採用前に十分な情報を確認しておけば回避できたかもしれません。
ただし、応募者のプライバシーに関連する情報をどこまで聞いてよいかが不明確で、企業が慎重にならざるを得ない背景があります。特に、家族構成や健康状態に関する質問は、配慮を欠いた内容になると応募者の人権を侵害する恐れがあります。
採用時の質問に関する法律の制約
ここで改めて、採用時における代表的な法的な制約を確認しておきましょう。
まず「男女雇用機会均等法」は、性別による差別を防ぐため、結婚・出産予定に関する質問を禁止しています。これは、採用過程での平等な機会を保障するためのものです。また、家族構成や健康状態についても、過剰な質問とみなされ人権を侵害するリスクがあります。近年、人権への配慮が強く求められるようになり、プライバシーを保護するため、履歴書に本籍や配偶者の有無を記載する必要がなくなるなどの改正が行われてきました。
企業がこうした情報を知りたい理由には、勤務への影響を事前に把握したいという意図があるかと思いますが、法律を遵守することが最優先であるため、企業は直接的な質問を避けつつ、必要な情報を得る方法を工夫する必要があります。
事前アンケートの活用
そこで今回、ご紹介したいのは、事前アンケートの活用です。ご説明した通り、採用の過程には様々な法的な制約があり、家族事情や健康状態などのプライバシーに関わる質問を直接することが難しいですが、記述型のアンケートを用いることで応募者に自己申告してもらう方法が取れます。
あくまでも任意のアンケートですので、質問に答えてもらうことを強制することはできませんが、企業が気になる今後の家族構成の変更の予定や残業の可否などを記述してもらう欄を作ることができます。「書ける範囲で構いません」「選考以外には使用しません」ということをしっかり伝えた上で、アンケートの協力をお願いしましょう。
こうした工夫により、必要な情報を収集した上で選考が進めることができます。また、アンケートで得た情報を基に、企業で出来るサポートを提示することができれば、求職者に対しても、安心感を与えることができるでしょう。
証拠としてのアンケートの重要性
事前アンケートを行うことは、後のトラブルを防ぐうえで証拠としての役割も果たします。採用時のやり取りが口頭だけでは、「言った・言わない」のトラブルに発展することがありますが、アンケートに情報を記録しておくことで、後から確認する際の証拠となります。
特に、採用時における条件や従業員が提出した申告内容を文書化しておくことで、万が一のトラブルの際に役立ちます。例えば、健康状態の自己申告があった場合、企業はその内容に基づいて適切な配慮を行った証拠としてアンケートを提示できます。このように、事前アンケートは情報収集の手段であるだけでなく、企業と従業員双方にとって安心できる環境づくりの一環として機能します。企業が適切にアンケートを管理し、有効に活用することで、円滑な採用活動を実現し、採用後もトラブルを未然に防ぐことができるのです。
採用活動でのトラブルを防ぐためには、事前の準備と工夫が欠かせません。法律の制約を守りながらも、アンケートを活用することで、企業は従業員が働きやすい環境を整えつつ、トラブルのリスクを減らすことができます。これらの対策をしっかりと講じることで、採用後の不安を軽減し、より良い職場環境の構築に一歩近づくことができるでしょう!