学者の世界も機能不全
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく解説していきます。
それでは、第四百六十五回目。
テーマは、「学者の世界も機能不全」です。
前回、最高裁が機能不全に陥っていると申しましたが、この最高裁と並び機能不全に陥っているのが、租税法学者と考えています。
大学などで教鞭をとる租税法学者は、日本の裁判例や他の学者の論文、そして海外の税法の研究が中心です。
このため、本来研究するべき日本の税法に対する理解が甘く、いい加減な見解を提示することもあります。
典型例が借用概念論と言われるものです。
借用概念論は著名な研究者が提唱しているもので、判例でも税法は借用概念論で解釈するべき、とされています。
この借用概念論ですが、簡単に言うと税法で特に定義されていない用語については、その用語が使われている他の法律と全く同じ意味で解釈する、という税法の解釈論を意味します。
このため、所得税で問題になる「住所」について、民法に規定がある「住所」と同じ意味で考えなければならない、といった議論が研究者の論文ではよく見られます。
しかし、これは全くの嘘で、実際に税法を書いた方にも聞きましたが、借用概念論で条文を書くなどあり得ません。
他の法律と同じ意味で条文を書くとなると、その他の法律にも精通した上で税法を書くべきですから、法律を各社の能力的に無理な話だからです。
実際のところ、税法でよく見る「生計を一にする」という用語についても、所得税法と相続税法で意味は違うと言われます。
加えて、「支払」という用語でも、法人税における役員給与の「支払」には未払いを含み、所得税の事業専従者給与の「支払」には未払いを含まないとされています。
同じ税法でも税目が異なれば用語の意味が変わる訳ですから、民商法や会社法など、税法と異なる法律の用語の意味とも一致などする訳がありません。
これらの点を踏まえれば、租税法学者がいまだに言葉にする借用概念論は嘘であり、早急に改めなければならない議論です。
しかし、著名な研究者が提唱したこと、そしてこの解釈論を正しいと認めた判例などがあることから、借用概念論はいまだに正しいと言われます。
学者の世界においても、著名で権威が高い学者や裁判所に対する忖度が幅を利かせています。
このため、高い知能指数をお持ちのはずの学者が、こんな初歩的な誤りにも気づけないのでしょう。
言うまでもないことですが、税務は税法で決まるので、正しい税法の解釈がすべてです。
正しい税法の解釈をサポートするのが裁判所であり、そして租税法学者のはずですが、彼らを支配するのは法律ではなく「忖度」です。
こんな忖度が税法を捻じ曲げた結果が近年の不当な課税の根拠になっていますから、裁判所はもちろん学者の世界も法律第一主義に戻るべきです。
困ったことに、条文を読めない「学者」も多数存在する模様ですが...
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