Column/コラム

「相当の理由」と「やむを得ない事情」

「相当の理由」と「やむを得ない事情」

「相当の理由」と「やむを得ない事情」

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖いとおっしゃる税務調査に対し、勇気をもって戦えるノウハウを解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく解説していきます。

それでは、第四百六十回目。
テーマは、「「相当の理由」と「やむを得ない事情」」です。

税務上問題になる電子取引のデータ保存については、テレビコマーシャルなどでは現状それが義務付けられていると言われます。
この電子取引のデータ保存ですが、電子データで受領する経理資料を、税務調査の際所定の方法で検索できるようにしたり(検索要件)、改ざんを防止したりする措置(真実性の確保)を施した上で、保存することを言います。
令和5年12月31日までは、その義務を猶予する規定が設けられていました。
しかし、令和6年1月からは、この猶予措置が廃止されています。

ただし、猶予措置が廃止されたといっても、完全に義務化されている訳ではありません。
「相当の理由」があって所定の方法で紙保存をするなど一定の要件を満たせば、検索要件や真実性の確保などの一切の要件を必要とすることなく、電子保存ができるとされています。

従来、電子取引のデータ保存の義務化は対応が困難であるということで、猶予措置が設けられていました。
今後は実質的に電子取引のデータをそのまま保存した上で所定の方法による紙保存もすれば、税法上は原則として問題ないとされます。

この措置に対しては好意的に受け取られることが多く、「紙保存がOKになる」と声高に解説するyoutuberの税理士も多くいらっしゃいます。
しかし、これは「相当の理由」があって認められる取扱いとされていますので、法律的には安易に紙保存が認められる訳ではありません。

実際、会計システムベンダ―の方から、「相当の理由って何ですか?」といった問い合わせが多数ありますが、具体的な取扱いは不透明で、解説が難しい状況です。
ただし、一つ言えることは、法律的には過去の猶予措置よりも厳しい要件が建前としては要請される、ということです。
過去の猶予措置ですが、実際のところは完全に猶予されていた訳ではなく、「やむを得ない事情」がある場合に認められるとされていました。

法律用語において、今回の「相当の理由」は以前の「やむを得ない事情」よりもハードルが高い場合に使われる用語とされています。

過去の猶予措置は、一例として電子保存のシステムを社内で揃えることが困難な場合などに認められるとされていました。
今後は、それ以上に困難な状況が存在しないと、建前としては、紙保存しておけばいい、という取扱いは認められないということになります。

となると、この措置は安易に使えないはずですが、実務上税務署が厳しい対応をする確率は高くありません。
なぜなら、税務署にとっては、経理資料が電子保存されていようが紙保存されていようが、事実確認ができればいい話だからです。

このため、法律に関係なく、仮に相当な理由がなくても、紙保存した上で電子データを残してしておけば、問題なしと判断することも多いと考えられます。
こういう訳で、「やむを得ない事情」も「相当の理由」がなくても、紙保存した上で電子データを残していれば問題なし、というのが税務当局の本音です。

法律上厳しい要件を課しているのは、令和3年度改正で、電子取引のデータ保存義務化を過って作ってしまったためです。
保存義務化を廃止すればすぐに解決するのに、廃止すればこのミスが明らかになり、混乱が生じる可能性があります。
そうならないために、一定の場合にのみ紙保存を認めるという体裁をとりつつ、実質的に紙保存も認めるとしているのです。

このため、法律上の要件としては厳しいですが、実務はそこまで厳しくないはずで、リスクとのバランスを考えながら処理する必要があります。

追伸、

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