納期の特例業務でRPAが大活躍!?納特業務の企画からRPA運用の方法を担当者にインタビューしてみた!
会計事務所では6月、7月に源泉所得税の納期の特例の業務で繁忙を迎えます。
セブンセンスではまとまったロットの受託先などもあるため、年末調整や確定申告と同様に、毎年担当チームが企画を立てて当該業務に臨んでいます。
2024年の納特業務では、RPAが本格的に業務で稼働し、大きな成果を上げたとのことで、担当者の二神さん、田子さんに直撃インタビューしてみました。
電子申告の煩雑さからRPA導入を提案
–まず、この納期の特例の企画がどのように立ち上がったのか教えていただけますか?
二神: 基本的に確定申告の推進メンバーが中心となってスタートします。メインの業務担当者2名、進捗管理表※を作成するシステム担当者、そしてRPAを実装する田子さんの4名くらいでキックオフを行います。通常、業務開始の1か月前には準備を始めます。
※セブンセンスでは、納特の進捗管理表はkintoneで構築しています。
–今回はRPAを実装する田子さんは、どのような経緯で参加されたのですか?
二神: 元々、田子さんは電子データ作成などの業務を担当してもらっていました。その中で、反復作業となるような仕事をピックアップしてもらって、RPAに置き換える作業をしてもらいました。
田子: 私は2022年に入社し、納特の作業はこれが3回目です。初年度は手作業で行い、23年の納特(納期の特例)業務からRPAを導入しました。
–RPAの導入は2023年から始まったのですね。ちなみに、メンバーには進捗管理表の担当者の方も入るんですね?
二神: はい。RPAを動かすことを前提で業務フローを設計し、進捗管理表の担当者と連携して管理表を作成しました。RPAでエラーが起こることも想定して、業務フローを調整したりしていますね。
田子: 他にも、RPAで進捗管理表の更新も行ったりしています。RPAで自動で処理できるのはいいんですけども、裏で勝手に動いている感じになるので、何がどこまで進んだかが、業務をしている人からは分からなくなってしまいます。そこで、RPAが進捗管理表の更新をして、工程単位で何がどこまで進んでるのかを確認できるようにもしました。
進捗管理表の担当者とは、業務の情報をどう取得するのか?みたいな打合せを何度もさせてもらいました
–とても興味深い話ですね。もう少し具体的に教えていただけますか?
田子: 例えば、以前は受託先のシステム※を人が目視で確認し、業務を進めていましたが、今ではRPAが自動でシステムを確認し、必要な資料をダウンロードまでします。RPAが処理を完了すると、進捗管理表のステータスを更新し、処理者が次の工程を開始できるようになっています。
※セブンセンスでは、一部の受託先の業務において、当該受託先専用のシステムから業務を引き継ぐ仕組みがあります。
二神: この工程はもともとその後の工程と合わせて1つの工程になっていたんですが、RPAを導入するにあたって1つ区切りを入れたみたいな感じになりますね。
昨年は、RPAの開発が間に合わなそうな箇所は、工程としては分けておいて、外部のワーカーさんにお願いしたりしていましたが、今年はRPAでやってみることにしました。
–RPAを活用しようと思ったきっかけは、どのようなものだったのでしょう?
田子: もともと私は前職の時からRPAに触れていたんですね。なので、RPAでどういうことができるのか、どういうメリットがあるのかっていうのを理解していました。
ですから、2022年に電子データ作成などの作業をやっている中で「これRPAだったら楽なのにな」っていうのはずっと思っていた部分がありまして。それで、納特の業務が終わった時に、RPAを導入する提案をさせてもらいました。
二神: 田子さんから案が上がってきて、「じゃあ電子データ作成はもうそれでいこう」みたいな感じでした。私自身、電子データの作成とかは正直時間の無駄だと思っていましたし、やりたくない気持ちは分かっていましたから。
1件当たりの処理時間6割削減。RPA導入の劇的な効果
–今回、RPAを導入してみて大きな効果があったと聞いていますが、具体的にはどのくらいの効果があったんでしょうか?
二神: 各工程の標準作業時間をベースに集計をとってみたんですが、1件あたり20分以上かかっていたのが単純に半分以下になっています。
その成果もあって、昨年は外部のワーカーさんや、他部署に依頼していた業務を内製化できていたりします。
期間で見ても、昨年は40日くらいかかっていたのに対し、今年はトータルで20日間くらいしか稼働していません。
RPAの技術的な課題と、季節業務への期待
–RPAを使っていて、まだうまくいっていない部分や課題と感じている部分を教えていただけますか?
田子: チェック作業の部分にはまだ課題があると思っています。今は人が目視で2つのデータを照合して確認しています。単純なデータ上のチェックならRPAでも可能ですが、画像上でのチェックは現状まだRPAでは難しいです。そういったチェック作業が自動化できると、RPAの活用範囲が広がると思います。
—なるほど。その辺りは技術的に解決できるものなのでしょうか?
田子: 私が言っている課題は画像情報の確認にあります。手書きの文字などをOCR(Optical Character Recognition)で読み取り、そのデータと照合すべき対象のデータをチェックできれば良いと思っています。しかし、現状のRPAに搭載されているOCR機能は、使えるレベルではないので、別の高性能なOCRソフトを使う必要があります。
—最近はChatGPTなどが画像を読み取って正確に内容を認識する機能がありますが、そういった技術が搭載されると変わるかもしれませんね。
それでは逆に、RPAに対する期待感について伺いたいと思います。他の季節業務などでのRPAの利用について見据えていることはありますか?
二神: 今回のRPA導入で、電子データ作成や資料の引き継ぎ、ダウンロードなどがうまくいきました。
具体的には、ダウンロードしたデータを所定のフォルダに保存し、DocuWorks化してリネームするといった処理や、申告ソフトの達人を使って書類を作成し、納品用の書類をRPAで出力をしたりしました。
これまで人が行っていた部分をRPAに置き換え、精度も高かったので、この経験を年末調整や法定調書合計表、確定申告などの他の業務にも応用できると考えています。
RPA導入における事前準備の重要性
–ちなみに、RPAを構築するにはどのくらいかかるのでしょうか?キックオフは業務が始まる1か月くらい前という事でしたが…。
田子: 今回一番ウェイトの大きかったのが、引き継ぎ処理と納期の特例処理の2つの工程です。これらは実際には1つの動きとして処理していますが、設計上は一番重要な部分でした。ただ、この作り込みに関しては、実際に本格的に作り込んだのは1週間もかかっていないですね。
RPAの設計で一番苦労するのは、業務フローが細部まで確立していないと絶対に作れないということです。キックオフから二神さんが業務イメージを作ってくださっていますが、途中で何度も変更や調整が入ります。最終的に完成した業務フローがスタートラインになります。
–キックオフの段階ではまだフローが完全に定まっていないから、直前にならないと構築や実装ができないということですね。
田子: そうですね。確実に動きが変わらない部分から少しずつ構築して、最終的に全部を繋げるイメージです。また業務フローを考える中で、イレギュラーなケースも出てきます。これが想定内のものか、想定外のものかを見極め、どこまでをRPAで処理するのかを決めておかないと、動かし始めてすぐに止まってしまうことがあります。
そのため、細かく調査してRPAの動きに含める・含めないの確認も行っています。
–なるほど。
田子: もう一つの課題は、RPAを構築する環境が整っていないと作れないという点です。完全に0から作るのではなく、現状のシステム利用環境で作っていく必要があります。今回の場合、社内だけであれば良いのですが、受託先のシステムから情報を取得する動きをする必要があります。そのため、受託先のシステムの環境が整っているかどうかを確認しなければなりません。
例えば、ダウンロードする画面が存在しないとか、ボタンが押せない状態だとその工程の設計は行えません。そのため最終的な調整は、業務開始と同時に行うことが多いです。社内の環境整備については、スケジュールを確認し、この日からは動作確認が可能ということが分かれば、その日に向けて他の部分を作っておきます。このように、RPAを構築する環境準備には毎回苦労しています。
–たしかにそうですね。それでは、RPAのそのような特性を踏まえて、季節業務について企画を立てて進めることの重要性についてお二人の意見を伺いたいと思います。まず、二神さんからお願いします。
二神: 非常に重要だと思っています。私は完成品から逆算して業務フローを組んでいます。RPAが動く条件として、基本情報が揃っていることや、環境が整備されていることが必須です。これが不十分だと、RPAはエラーを起こしてしまいますし、完成品も不完全になってしまいます。
具体的には、システムに顧客の基本情報が全て入っている状態にしたり、フォルダーやファイルの名称を統一するなど、細かい部分まで事前に準備しておくことが重要です。これらをしっかり行わないと、完成品の精度も低くなってしまいます。
そのためには企画を立てて、全体でしっかりと準備を進めていくことが重要になります。
–ありがとうございます。それでは、田子さんはいかがでしょうか?
田子: 準備・企画は非常に重要です。特に規模の大きい業務の場合、準備が7割、8割を占めると言っても過言ではありません。事前準備をしっかり行えば、あとはスムーズに進められるというのが私の考えです。
私自身、群馬県からフルリモートで仕事をしていますので、二神さんにすぐに質問できる環境ではありません。そのため、チャットで頻繁にやり取りをしながら準備を進めています。
このように推進チームで密にコミュニケーションを取りながら準備を進められることも非常に重要だと思っています。
まとめ
いかがでしたか?
今回の納期の特例の業務においてRPAの活躍はもちろんですが、どんな業務においても丁寧に準備をすることが大変重要だということがおわかりいただけたと思います。
冒頭でもお伝えした通り、セブンセンスでは確定申告業務をはじめ季節業務で「企画」を立てています。
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