Column/コラム

中古建物の新たな節税が話題に

中古建物の新たな節税が話題に

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百五十四回目。

テーマは、

「中古建物の新たな節税が話題に」

です。

令和2年度改正により封じ込められた
節税スキームとして、海外中古建物の
節税があります。

海外にある中古建物を購入すると、
多額の減価償却費を計上することが
できますので、日本の富裕層が
自身の給与とその減価償却費を
相殺することで所得税を節税していました。

このスキームは、海外の建物は
日本の建物よりもはるかに
長持ちするのに、税務上の耐用年数は
日本と海外で変わらないという
税法上の欠陥を突いた仕組みでした。

なお、中古資産の耐用年数は税法上の特例で
より短くすることができますので、
海外中古建物を活用することがより効果的と
言われていました。

本スキームは現状制限されていますが、
税務雑誌に新しいスキームが
紹介されていました。

この新しいスキームは、海外中古建物の
資産区分をより細かく区分し、
建物附属設備や構築物、
そして器具備品など建物以外の
資産とすることで、中古資産の耐用年数の
特例を活用する、という仕組みです。

あくまでも、現状の節税スキームの制限は
海外にある「中古建物」について
適用されますので、「中古建物附属設備」や
「中古構築物」、そして「中古器具備品」で
あれば対象になりません。

結果として、これらについては、
従来と同様に節税に使うことができます。

このように、建物以外の資産に細かく
区分して海外中古建物の節税制限を
逃れるスキームなのですが、
スキームなどと申し上げると法の穴を
突くように聞こえるかもしれません。

しかし、実際のところ、税務上は
耐用年数を的確に適用するために、
建物などの固定資産は原則として細かく
区分しなければならないとされています。

このため、これは新しい節税スキームと
いうものではなく、法律で義務付けられたこと
をやっているにすぎません。

ただし、実務においては、
建物とそれ以外の建物附属設備などに
細かく区分することは多くありません。

この理由は大きく二つあり、
一つは細かく区分することが
難しいからです。

税法の欠陥でもありますが、
建物、建物附属設備、構築物、器具備品などの
資産について明確な定義はありませんので、
正確に区分することは
プロでも非常に困難です。

もう一つは、
建物以外の資産を建物に区分しても、
税務当局はあまり問題にしないからです。
耐用年数が長ければ長いほど、
経費になる減価償却費は小さくなります。

最も耐用年数が長い資産は
言うまでもなく、建物です。

このため、他の資産も建物に区分してもらえば
経費が少なくなり税収が増えますので、
税務当局は文句を言いません。

このような事情がありますので、
法改正が実現するまでは、
この新しいスキームを活用しなければならず、
それで税務当局から問題視される可能性は
低いと思われます。

もちろん、税務当局は節税を放置することは
ありませんから、改正の動向には
注意しなければなりません。