Column/コラム

インボイスの問題は税に止まらない

インボイスの問題は税に止まらない

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖いと
おっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百五十三回目。

テーマは、
「インボイスの問題は税に止まらない」
です。

2023年10月からスタートしたインボイス制度
については、未だに批判の声が多くあります。

やはり、インボイス制度は経理実務の負担を
増大させるだけではなく、
事務コストを大きく増加させたり、
取引先から取引を見直されたりするという
経営上の問題を生じさせるものだからです。

事務コストの増加という点からすれば、
金額の多寡を問わず小まめに請求書を
発行したり保存したりするだけではなく、
「立替金精算書」の作成が
大きな手間になります。

新設法人や社長一人の会社などに多いですが、
携帯電話の名義などを社長個人のまま変えず、
社長個人の名義の請求書で
法人の経費とすることがよくあります。

しかし、名義が個人の請求書を法人の
インボイスとすることはできませんので、
このような場合には社長個人名義の
請求書に加え、会社の経費とするために
社長に立替金精算書を書いてもらう
必要があります。

同様に、例えば数十人で飲みに行き、
代金を幹事が集金して店に支払った場合を
考えてみましょう。

一人ひとりが店から割り勘の領収書を
貰わない場合、現行制度では払った金額を
帳簿に書いておけば原則問題ありません。

しかし、インボイス制度においては、
各人毎の領収書が必要になりますので、
仮に店に領収書を作ってもらわなければ、
実際に代金を支払い、一括して領収書を
もらった幹事は各人別に立替金精算書を作り、
原則として一括で店に払った
領収書のコピーを各人に配る必要があります。

国税職員は小さいことに
気を使わないという性格もあり、
現状は社長個人名義の請求書も
割り勘の領収書も、
問題にすることはほとんどありません。

しかし、インボイスはこのような
細かい作業を「法律上」要求するもの
ですので、経理の負担は大きくなります。

引いては、売上に影響しない経理などの
コストも増大する訳で、まさに
経営上の問題となります。

その他、経営上の大きな問題になると
解されることとしては、業種によっては、
インボイス制度がスタートすることで、
従来に比して取引の見直しなども増えると
懸念されることです。

典型となるのが、今はやりの
サブスクリプションのサービスを
対事業者向けに提供している業種です。

サブスクのサービスは、毎月継続課金され、
口座振替などで自動的にお金を払うことに
なるため、中途解約できるのに顧客が
あまりそのコストを意識しないまま惰性で
継続する、というケースが従来は
多いように思います。

このため、安定した商売と言われていますが、
インボイス制度においては、金額に関係なく
請求書等の交付が必要になります。

となれば、否応なく顧客はインボイスの
交付を受ける際、そのコストを
意識することになるでしょう。

そうなると、より優れたサービスを
提供し続けなければ、即解約につながる訳で、
これらの事業者に与える影響が
ますます大きくなると考えられます。