Column/コラム

生前贈与加算の見直しの是非

生前贈与加算の見直しの是非

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百五十一回目。

テーマは、

「生前贈与加算の見直しの是非」

です。

今後、実現可能性が高い税制改正事項として、生前
贈与加算における加算期間の延長が挙げられます。

令和5年度改正では、加算期間が3年から7年に延
長されていますが、将来的にはこの期間の制限がな
くなる可能性もあります。

贈与税の計算上、年110万円までは非課税となる
暦年贈与については、相続開始前7年内の相続人に
対する贈与は相続財産に加算され相続税の対象にな
るとされています。

これを生前贈与加算といいますが、7年以前の贈与
は加算の対象にはなりません。

国はこの生前贈与加算の加算期間をもっと根徴した
いと考えているはずで、令和5年度改正で7年とさ
れる前は、10~15年程度に延長させる方向であ
ったと報道されていました。

現状、相続前7年分しか加算されないので、生前贈
与をうまく使って相続財産を減らす、というのは王
道中の王道の相続税の節税です。

しかし、税収を確保したい財務省は、このような節
税も問題視しています。

仮に、加算期間の制限がなくなれば、生前贈与によ
る節税は難しくなる訳で、生前贈与以外の節税が必
要になり、より早いうちから計画的な相続税対策が
必要になります。

現在においては、7年が加算期間ですので、それよ
り前の生前贈与は問題ありません。

このため、早いうちから生前贈与することは有効で
すが、このような贈与をするのであれば、名義財産
の否認リスクがついて回ります。

例えば、小学生の子に贈与税が課されない110万
円の預金を贈与したとしても、その預金の管理は贈
与した親となることが通例です。

そうなるとその預金は子のものではなく親のもので
あり、生前贈与は認められない、と税務当局から指
摘される可能性が大きいです。

意思能力がない未成年の子については生前贈与を否
認される可能性がついて回りますので、そのリスク
ヘッジをどうするのか、常に検討が必要です。

話を戻しますが、財務省の本音は生前贈与の加算期
間を永久にすること、すなわち「相続時精算課税」
に贈与税の計算を一本化することにあることは決し
て忘れては行けません。

過去の税制改正大綱に書かれたこともあって、暦年
課税を廃止し、過去に贈与を受けた財産のすべてを
相続財産とする相続時精算課税制度に贈与税の課税
方式を一本化する改正がいつかは行われる、といっ
た噂が広まっています。

おそらくですが、このような噂に対する批判が大き
かったので、令和5年度改正では敢えて暦年課税は
廃止せず、生前贈与加算の加算期間を増やす改正に
落ち着いていると思います。

しかし、これはあくまでも手始めと思っています。
今後の景気動向などを見つつ、国は暦年課税を廃止
する増税を実現させようとするでしょう。

こういう訳で、税制改正の方向性には今後も注意が
必要ですが、困ったことに税制改正については、非
常に多くのフェイクニュースが流されています。

具体的には、生前贈与加算の期間を増やす「増税」
が本音なのに、生前贈与加算の期間が増えることで
早いうちに若者に贈与を促すための「政策」措置で
ある、といった報道が令和5年度改正の際にはなさ
れていました。

若年層に早く贈与しても、名義財産として否認する
のは目に見えているので、税務当局にはこんな意向
は全くありません。

このようなフェイクニュースに騙されることなく、
毎年度の税制改正には厳しい目を向ける必要があり
ます。