Column/コラム

無議決権株式の評価に騙されてはいけない

無議決権株式の評価に騙されてはいけない

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百四十八回目。

テーマは、

「無議決権株式の評価に騙されてはいけない」

です。

相続税の評価において、疑問に思うことが多いのが、
無議決権株式の評価です。

非上場株式の評価は、議決権に応じて異なる方法が
採用されており、議決権が大きい株主やその同族関
係者は原則的評価という高い評価となります。

その反面、それ以外の議決権が小さい株主について
は、特例的評価という低い金額で評価できるとされ
ています。

この取扱いを利用して、本来原則的評価が適用され
るオーナー一族などの株主が、議決権のある株式を
無議決権株式に転換すれば、議決権がないため特例
的評価で節税ができる、と解説する書籍がいくつか
存在します。

これらの書籍の記述を見た富裕層の方から、相当高
額な自己株式であっても、無議決権株式に転換すれ
ば節税できるのではないか、といった相談をよく受
けます。

しかし、私はすべからく無理と指導しています。な
ぜなら、無議決権株式に転換することは非常に簡単
で、やろうと思えばいつでもできるからです。

このような安易なことで節税できるなんてことを、
税務当局が許す訳はないからです。

ただし、このような解説をしても、一般の納税者の
方に理解してもらえることはほとんどありません。

議決権が小さければ特例的評価になるというのは、
税務当局が決めた通達で明記されているルールだか
らです。

通達に従っているのに、何で無議決権株式を使った
節税ができないのかといったお叱りを受けることさ
えあります。

さらに困ったことに、通達のルールですから、税務
当局の相談センターに質問すると、国税職員は「通
達でOKですから問題ないと考えられます。」と回答
します。

しかし、相談センターの回答は絶対的なものではあ
りませんし、税務調査で異なる事実関係を発見した
ような場合には、その回答と異なる課税をしても法
律上問題はないとされています。

このため、中には相談センターのお墨付きもある!
と腹を立てておっしゃるお客様もいるのですが、そ
れでも無議決権株式で節税するのは危険極まりない
ことです。

結果として、無議決権株式を使った節税を実行すれ
ば後日の税務調査で問題にされる可能性があり、実
行しなければお客様からクレームを受けます。

このため、税理士としてはどちらに転んでも望まし
くない訳で、法律や通達を無視して税金を取る税務
当局の実態や、無議決権株式の取扱いの真実につい
て、一般の納税者の方にも理解してもらいたいと考
えています。

とは言え、このような理想はまず理解してもらえな
いでしょう。

いずれにせよ、こんな節税を税務署は許す訳はあり
ませんから、無議決権株式に転換すれば特例的評価
になる、という正気の沙汰とは思えない通達を一日
も早く税務当局は改正するべきです。

税理士や納税者に万一の責任を取らせる現実を率先
して変えるべきでしょう。