Column/コラム

鑑定評価での按分が認められた事例がある

鑑定評価での按分が認められた事例がある

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百四十七回目。

テーマは、

「鑑定評価での按分が認められた事例がある」

です。

消費税の計算上、土地と建物を一括で購入した場合
の按分が問題になります。

土地の消費税は非課税である反面、建物は消費税が課税されます。

支払った消費税は消費税の計算上控除できますので、
土地付き建物を一括で購入した場合、建物部分の消
費税を計算する必要があります。

契約書などで土地と建物の内訳が明確であればその
通りに按分すれば原則問題ありませんが、書かれて
いない場合は合理的に按分することになります。

この合理的という基準ですが、税務的には原則とし
て時価を意味します。具体例を申し上げると、1億
円で土地付き建物を購入した場合、土地の時価が6
000万、建物の時価が4000万と評価されれば、
それぞれこの金額で按分することになります。

問題になるのは、何をもって時価とするか、という
ことです。

時価といっても、相続税の評価や不動産鑑定士の評
価など、いろいろな時価があります。

採用する時価によっては、建物の金額が変わります
ので、消費税の計算も変わります。とりわけ、建物
の消費税は巨額ですので、場合によっては消費税の
還付も発生します。

土地付建物を購入した時、意図的に建物の時価が大
きくなるような評価を採用すれば、消費税の節税が
可能になります。

このため、採用した時価が適正なのか、国税も厳し
くチェックします。

この点、裁判例においては、建物と土地の按分は固
定資産税評価額でやるように判断されることがほと
んどです。

この理由は、固定資産税評価額は公共機関が発表す
るため信頼性があること、そして固定資産税評価額
は地方公共団体という同一の機関が評価するため、
按分には合理的であること、が挙げられます。

こういう訳で、取り敢えず固定資産税評価額で按分
しておけば、実務で問題になることはありません。

ところが、先日の裁判例では、固定資産税評価額で
はなく、鑑定評価での按分も、合理的であるとして
認められました。

とりわけ、この事例においては、鑑定評価の按分の
方がより固定資産税評価額よりも建物の金額が大き
く計算されたため、支払った消費税額も大きくなり、
納税者に有利になりました。

仮に、このような処理が認められれば、鑑定評価と
固定資産税評価額、有利な方をうまく選択して、消
費税の節税を図ることができます。

なお、鑑定評価は不動産鑑定士によってかなり異な
ることが通例です。中には、顧客の意向を踏まえ、
違法にならない範囲で顧客に有利な鑑定評価を出し
てくれる場合もあると聞いたことがあります。

となると、鑑定士とうまく連携をとれば、建物の金
額を大きくしてもらい有利な消費税の計算ができる
場合もある訳です。

もちろん、やりすぎると国税ににらまれますので、
適正と認めさせる交渉力も必要になります。