Column/コラム

「300万以下は雑所得」が意味すること

「300万以下は雑所得」が意味すること

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百四十四回目。

テーマは、

「「300万以下は雑所得」が意味すること」

です。

昨年、大きな話題になった所得税の通達に関するパ
ブリックコメントがあります。あまりの大きな反響
に当初案を翻す、という前代未聞の事態にまで発展
しました。

このパブリックコメントの当初案では、年間の収入
金額が300万円以下である所得は、それが納税者
のメインの所得でない場合、特に反証がない限り雑
所得に該当する。とされていました。

自分の行う事業について、その規模が大きいと認め
られる「事業所得」になるか、それとも規模が小さ
いサラリーマンの副業のようなもので「雑所得」に
なるか、所得税の実務上、往々にして問題になりま
す。

困ったことに明確な判断基準がなく、税務署と納税
者で見解の相違が生じていますが、一義的には売上
金額の300万という基準で判断される、としてい
た訳です。

事業所得と雑所得の区分が問題になるのは、これら
の所得の計算上赤字になった場合の取扱いが異なる
からです。

事業所得の赤字はその他の給与などの所得と相殺で
きますが、雑所得の赤字は相殺ができません。

このため、収入がほとんど上がっていない、規模的
にどう見ても雑所得にしか見えないような赤字の副
業を事業所得として申告することで、その赤字を給
与所得などと相殺する所得税の申告が現状も多く見
られます。

もちろん、このような申告をすると税務調査で是正
される可能性が大きいと言われますが、事業所得と
雑所得の区分について明確な線引きがないため、税
務署にとってもその是正は非常に困難でした。

このため、税務調査の実務では納税者や税理士がゴ
ネることで、本来は雑所得のような小規模な事業も
事業所得と認めさせることも多くあります。

加えて、所得税の申告件数は膨大ですから、このよ
うな申告をする納税者全員に税務調査をすることは、
そもそも困難という現実もあります。

このような事情を踏まえ、税務署も何か明確な基準
が必要、ということで、収入金額300万という基
準を打ち出したと思われます。

しかし、十分な税法の知識がなく、かつ税務署に忖
度する裁判所の現実を踏まえれば、今後の実務にお
いては、この基準が独り歩きし、300万という基
準で万時判断されることになると考えられます。

先に述べた通り、「反証がない限り」という条件は付
されていますが、こんな条件は「一応実質的に規模
を判断する」という建前に過ぎません。

実際のところ、アパートの家賃などの不動産所得に
ついて、その規模が事業と言えるか否かについては、
法律上は実質的に判断するとしつつ、国税庁が通達
で決めた、5棟10室基準(貸付戸数が5棟以上か
10室以上で事業とするという基準)で万事決まっ
ています。

実際のところ、1500万という個人では大きな収
入が発生している不動産所得についても、それが5
棟10室基準を満たさないことから、事業的規模で
はないとされた事例もあります。

しかし、300万という基準があまりにも硬直的す
ぎる、という意見があり、このパブコメについては
見直されました。

その結果、個人事業主が事業の帳簿を保存している
かで判断する、という方針に転換されています。

とはいえ、帳簿など付けようと思えば直前にでもつ
けられます
ので、この300万という基準も、税務署が判断の
一助にする可能性がありますので、注意が必要です。