Column/コラム

「法人税率引上げを政策減税で相殺する」に騙されてはいけない

「法人税率引上げを政策減税で相殺する」に騙されてはいけない

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百四十回目。

テーマは、

「「法人税率引上げを政策減税で相殺する」に
騙されてはいけない」

です。

防衛増税を行うなど、岸田内閣の税制改正の方向性
は増税のように思われます。

この防衛増税ですが、企業誘致のため、数年前まで、
各国は法人税率の引下げを競って行っており、日本
の法人税率も下げられました。

しかし、コロナ禍やウクライナ危機があり、企業が
納税する国を選ぶグローバル経済の時代は終わりつ
つあると言えますので、外国の法人税率を気にする
必要もない、といったことを政府は考えているので
しょうか。

とりわけ、台湾危機も迫るという話もある中、防衛
増税は必須と言われますが、経済状況はまだまだ厳
しいことも事実です。

このため、法人税率を引き上げるにしても、同額の
政策減税を導入することで、実質的な税負担が増大
しないように配慮する、といった対策も考えられて
いるようです。

一例をあげると、六月からスタートする定額減税な
どはこの典型でしょう。

政策減税で法人税増税の効果が打ち消されるのであ
れば税率が上がっても問題ない、と思われるかもし
れません。

しかし、実はこのような税制改正は非常に大きな問
題です。なぜなら、法人税率の引上げは法人税法を
改正して行われるのが通例である反面、政策減税は
原則として租税特別措置法の改正で行われるからで
す。

隠れ補助金とも言われる租税特別措置法は、特別措
置というタイトルからもわかる通り、原則として期
限付きの法律になっています。

期限付きであるため、一定期間立てば延長されない
限りその条文は自動的に廃案となりますし、仮に期
限付きでなくても、法律の廃止なので、改正があま
り目立たず、国会を通すことは比較的に簡単にでき
ると言われます。

一方で、法人税法を変えることは非常に大変と言わ
れます。このため、いったん税率を上げる改正をし
てしまえば、おいそれと下げられませんし、その法
律を廃止してなかったことにすることもできません。

このため、政策減税で法人税の増税を相殺する、と
言っても安心してはならず、いずれは法人税の増税
だけ残るという事態が想定されます。

実際、定額減税、これは所得税の減税ですが、一回
きりの制度です。

こういう訳で、経済状況がまだまだ困難な中、法人
税率の引上げは何とか見送ってほしいものですが、
岸田政権は財務省に配慮します。

このため、順調にいけば防衛増税も実現しそうな雰
囲気です。

私たちとしては、政治状況に留意するとともに、法
人税増税が実現した場合に備えて、生命保険の見直
しなど、節税の見直しも進めておいた方がいいのか
もしれません。

増税が実現すれば、税理士としては腕の見せ所なの
かもしれませんが、経済がこれ以上落ち込まないよ
う政府には慎重な対応を求めたいところです。