Column/コラム

補助金ガイド: 申請から支給までの10ステップ
2024.03.21
融資業務

補助金ガイド: 申請から支給までの10ステップ

補助金ガイド: 申請から支給までの10ステップ

補助金の申請から支給までのプロセスは、複雑で時間がかかるものです。しかし、適切な準備と知識を持っていれば、このプロセスをスムーズに進め、資金調達の機会を最大限に活用することが可能です。
本ガイドでは、公募要領の発表から補助金の最終支払いまでのプロセスを10のステップに分けて詳しく解説しています。補助金申請をスムーズに進めるために、ぜひ本ガイドをご確認ください。

ステップ1 公募要領発表

補助金の公募要領は、予告なく突然発表されることが多く、申請をする場合は準備をしておく必要があります。経済産業省管轄の補助金の公募要領は公式ウェブサイト上で発表されます。

【事業再構築補助金 第9回公募】

【ものづくり補助金 第14次公募】

公募要領の中には、補助金の目的、対象となる事業や活動、申請方法、必要な書類、選考基準、スケジュールなど、申請に必要な詳細情報が記載されています。そのため、補助金の公募が開始されたら、速やかに公募要領を確認し、申請に必要な準備を始めることが重要です。

また、補助金申請には、電子申請システムを利用するケースが多く、事前に「GビズID」というIDとパスワードの取得が必要になります。このIDは、補助金に限らず、様々な行政サービスの申請に使用できるため、あらかじめ取得しておくと大変便利です。

ステップ2 応募期間から申請期日まで

公募要領発表から申請期日までは、通常約2~3ヶ月程度に設定されています。この限られた時間の中で、申請者は補助金の申請に必要なすべての書類を準備し、申請書を完成させなければなりません。特に、事業計画書の作成には相当の時間と専門知識が必要とされます。事業計画書は、補助金の審査において非常に重要な要素であり、審査基準に沿った詳細かつ適切な内容が求められます。

このため、多くの場合、『認定経営革新等支援機関』などの専門的な知識を持つ支援機関の助けを借りて計画書を作成することが推奨されます。こうした機関は、申請書類の準備や電子申請のプロセスにおいて、貴重な助言やサポートを提供してくれます。応募期間は非常に短く、準備には多大な労力が必要ですが、適切な計画とサポートを得ることで、申請の成功率を高めることができます。

※セブンセンスは「認定経営革新等支援機関」です。

ステップ3 審査期間

提出された申請書と事業計画は、外部有識者から成る審査委員会が詳細に評価します。審査の主な目的は、提案された事業計画の質、実行可能性、補助金の目的に対する貢献度を検証することです。優れた事業計画は、イノベーション、社会的影響、経済的価値など、審査基準に基づいて評価されます。

審査期間は補助金の種類やその時の公募回によって異なりますが、一般的には2ヶ月から2ヶ月半程度を要します。この期間は、審査の進行状況によって延長されることがありますので、申請者は結果の発表を待つ間、事業の準備を進めるなど、有効に時間を利用することが重要です。

審査過程は公開されることは少なく、一般に申請者は結果の発表を待つのみですが、審査中に追加情報が求められる場合もあります。そのため、審査期間中も申請書に記載された連絡先を通じて迅速に対応できるよう準備をしておく必要があります。

ステップ4 採択発表

採択発表は、公募要領の発表と同様に、予告なく補助金の公式ウェブサイト上で行われます。採択結果は、選ばれた事業者のリストとして公表され、申請者は自分の事業がリストに含まれているかどうかを確認する必要があります。

例えばこちらの、「事業再構築補助金 第11回公募 採択結果」のように、採択されたプロジェクトの具体的な詳細が公表されます。
ちなみに事業再構築補助金 第11回公募は9,207件の申請公募があり、そのうち2,437件が採択され、その採択率は約26%でした。
この採択率は補助金の種類やその公募の条件によって異なります。

ステップ5 交付申請

採択発表の後には交付申請のステップに移ります。ただし、このステップは補助金によっては無い場合があり、その場合は採択発表=交付決定となります。
交付申請がある補助金では、採択発表でプロジェクトが選ばれたとしても、それは事業計画書の内容が採択(内定)されただけであり、実際に補助金を受け取るためには交付申請のステップを踏む必要があります。この段階では、最初の申請応募時に提出された書類に基づいて、事務局による補助事業経費の精査が行われます。見積書等を提出し、補助金の対象となる経費が適切かどうかの確認が行われます。
交付申請中、事務局から追加情報の提出や修正・訂正の要請がある場合があります。そのため、申請者は柔軟に対応できるように準備しておく必要があります。

ステップ6 交付決定

交付申請により認められた経費が補助金交付額として確定し、申請者に「交付決定通知書」が発行されます。この通知書を受け取ることで、初めて申請者は補助事業の実施、具体的には発注や購入等の実際の動きを開始することができます。

採択されたプロジェクトが交付決定を受けるまで、申請者は慌てて発注や契約を行うべきではありません。補助金の対象となる経費は、交付決定を受けてから発生したもののみとなるため、事前の発注や契約は補助対象外となる可能性が高いです。したがって、採択通知を受け取った後も、交付決定通知書の受領を待ってから事業を開始することが非常に重要です。

また、交付申請の遅延は交付決定の遅延を引き起こす可能性があり、それによって補助事業期間が短縮されるリスクがあります。十分な事業実施が難しくなる可能性があるため、スケジュール管理には特に注意を払う必要があります。

ステップ7 補助事業期間(中間監査)

補助金の交付決定通知書が発行され、事業が正式に開始された後、補助事業期間がスタートします。この期間は一般的に、採択発表日から短いもので半年程度、長い場合は1年以上となっており、補助金プロジェクトの実施にあてられます。補助事業期間中は、計画に沿ってプロジェクトを進行させ、必要な購入や活動を行います。

この期間内には、補助金を利用して行う事業の進捗状況を確認するための中間監査が含まれます。中間監査では、進捗状況、資金の使用状況、プロジェクトの成果物や成果に関する報告が求められることが一般的です。事業者は、これらの要件を満たすための準備をしっかりと行い、中間監査に備える必要があります。

また、補助事業期間中は、事業計画の変更や予期せぬ課題が発生する可能性もあります。このような場合、迅速かつ適切に対応し、必要に応じて補助金管理機関への報告や相談を行うことが重要です。事業計画に重大な変更がある場合は、事前に承認を得る必要があるため、計画の進行に影響を与えないように注意が必要です。

ステップ8 完了報告

補助事業期間の終了に伴い、申請者は完了報告(実績報告)を行う必要があります。完了報告とは、補助事業で行った事業が営業開始できる体制に整った状態を示し、事業準備の成果を報告することを意味します。この報告において重要なのは、次の二つのポイントです:

1.交付決定で認められた見積もり通りに、発注や支払いが行われたことを証明すること。

2.成果物(建物や機械装置、システムなど)の実際の状態を写真などで提出すること。

これらの証明には、支払いのタイミングや支払い事実を示す請求書、通帳のコピーなどが必要です。また、成果物については、具体的な写真やシステムのスクリーンショットを用意し、提出する準備をしておく必要があります。

ステップ9 確定検査

完了報告の提出後、補助事業が計画通りに遂行され、報告された実績が適正であるかを確認するために確定検査が行われます。この検査は、担当の地域事務局が行う「事前確認」として実施されることが一般的です。

検査の過程で、報告書類に不備がないか、補助金が計画通りの目的に使用されたか、提出された資料が事実に基づいているかなどがチェックされます。不備がなければ、補助金の最終的な請求に向けた手続きが進められ、問題が確認された場合は、追加の資料提出や修正が求められることがあります。

ステップ10 補助金請求

補助事業の実施が完了し、完了報告と確定検査を終えた後、申請者はいよいよ補助金の請求を行うことができます。

補助金の請求手続きには、完了報告書、費用の支払いを証明する書類(請求書や領収書、銀行の入出金明細など)、そして事業実施に関する報告書や写真など、確定検査で確認された書類が必要になる場合があります。これらの書類を整え、指定された形式で補助金管理事務局に提出します。

補助金請求書が受理されると、事務局は最終的な審査を行い、補助金の支払いが承認されます。承認後、通常は1~2週間以内に申請者が指定した口座に補助金が振り込まれます。この振り込みをもって、補助金申請プロセスは完了となります。

まとめ

いかがだったでしょうか?
補助金申請から支給までのプロセスは複雑であり、公募要領の理解から申請、審査、採択、交付申請、最終的な補助金の支払いに至るまで多くのステップを含みます。
各段階での詳細な準備と正確な書類提出が成功の鍵ですが、専門家の協力を仰ぐことで、プロセスを円滑かつ迅速に進めることが可能です。
適切な支援と正しい情報に基づく行動で、補助金の獲得を目指しましょう。

【著者情報】
セブンセンス税理士法人
コンサルティング部
塩屋 鷹祐