Column/コラム

みずほ事件が示す裁判所の限界

みずほ事件が示す裁判所の限界

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百三十九回目。

テーマは、

「みずほ事件が示す裁判所の限界」

です。

先日、みずほ銀行に対する国税の課税につき、東京
高裁でみずほ銀行が逆転勝訴した事例があります。

この事件では、みずほ銀行がケイマン諸島に作った
特定目的会社につき、タックスヘイブン税制の対象
になるかどうかが争われたものです。

日本の税制においては、タックスヘイブン税制と言
われる税制があります。

これは、ケイマン諸島などのタックスヘイブンに関
連会社を作り、そこに利益をため込むことで日本の
課税を逃れようとすることを防止するための制度で
す。

タックスヘイブンは税率が0%もしくは極めて低い
ため、そこに日本の親会社の利益を飛ばせば、グル
ープ全体として税負担は大きく下がることになりま
す。

このため、タックスヘイブンに作った関連会社につ
いて、事業の実態があると認められるなど、所定の
基準をクリアしない場合には、日本の親会社に対し、
その関連会社が留保した利益の一部について課税す
ることとされています。

みずほ銀行もタックスヘイブンに関連会社を持って
いたため、この関連会社についてタックスヘイブン
税制が適用されるかどうかが問題になりました。

法律の条文を読む限り、本件では、タックスヘイブン
税制が適用されると当然に解釈できます。

この点を踏まえ、国税は課税処分をし、かつ東京地
裁もみずほ銀行を敗訴としたのですが、どういう訳
か東京高裁はみずほ銀行を勝たせました。

判決が逆転した理由として、東京高裁は、みずほ銀
行は節税目的でタックスヘイブンの関連会社を使っ
た訳ではないから、としています。

タックスヘイブン税制は節税防止制度のための制度
である以上、節税目的を持っていないみずほ銀行に
対し、課税するのは趣旨としておかしい、として東
京高裁はみずほ銀行を勝たせたのです。

専門的には、このような解釈を趣旨解釈といいます。

一見すると合理的な判断に見えますが、税法につい
ては原則趣旨解釈をするべきではなく、法律の条文
を文言の通り正確に解釈しなければならないとされ
ています。

これを文理解釈といい、税法は文理解釈がすべてと
言われます。

となると、趣旨としては課税するべきではない場合
でも、文理解釈で課税されるとされていれば、課税
しなければならないことになります。この理屈は税
法の常識です。

こういう訳で、逆転勝訴した判決とは言っても、東
京高裁は誤った結論を示している、と考えています。

このような低レベルの判決を出してしまう裁判所は、
原則として税法を解釈する力はないといわざるを得
ないでしょう。

そもそも、司法試験に税法が出題されないため裁判
所は税法に詳しくありませんし、勉強していない者
に判断を任せてはいけないはずです。

となれば、きちんと税法を理解できる能力者、すな
わち民間にいる税理士や研究者が、裁判所に成り代
わって審査する必要があり、そのための機関を作る
ことも必要と言えます。

なお、この事件は最高裁でも判断され、最高裁はさ
らに判断を変えてみずほ銀行を敗訴としています。

近年、最高裁もおかしな判断をしていますが、本件
は妥当な判断をしたと評価されます。