Column/コラム

節税スキームは国税の動きを 考えなければならない

節税スキームは国税の動きを 考えなければならない

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百三十三回目。

テーマは、

「節税スキームは国税の動きを
考えなければならない」

です。

「こういう風にすれば法律上の問題はクリアできま
すので、税務調査で否認されることはないと思いま
すがどうでしょうか。」

このような質問を私はよく受けますが、その際思う
ことは、

「国税は税金をとれるようにしか物事を考えないた
め、国税がどう動くかをまず考える必要がある」

ということです。

国税経験のない大多数の方には意味が分からないか
も知れませんが、法律上の問題をクリアしても、何
とか税金を取ろうと考えるのが国税という組織です。

このため、節税をやる場合には、それに対して税務
署の立場に立ってどうすれば税金を取れるのか、そ
れをきちんと考えた上で、事前に対策をしなければ
なりません。

先日の裁決事例で、夫婦間の資金の移転に対し、税
務署が「贈与」と判断して贈与税を追徴したものの、
審判所で取り消された事例があります。

この事例では、夫のお金で生活していた、パートの
妻名義の預金が、夫の相続税の税務調査で問題にな
りました。

パートですから、当然ながら妻はその預金を開設す
るためのお金(原資)はありません。

加えて、その妻名義の預金で、夫は株を購入するな
どしていたようです。

となると、預金の原資もその預金の管理も夫という
ことで、相続税の常識としては、純然たる夫の名義
預金となるはずです。

実際のところ、税理士も夫の名義預金と考えたから
か、夫の相続税の申告の後、この預金は夫の名義預
金であるという理由で相続税の修正申告をしたよう
です。

しかし、ここで問題になったのは、配偶者の税額軽
減という制度です。

配偶者の税額軽減は、1億6千万と、相続財産に対
する配偶者の法定相続分のいずれか大きい金額まで
であれば、配偶者に対して相続税がかからないとい
う大きな軽減措置を言います。

本件で妻はその制度を使うことで、先の名義預金を
夫の財産として申告したとしても、追徴税額はゼロ
円と計算された模様です。

判例などで確立した、名義預金の判断基準によれば、
預金の原資が夫で、管理なども基本夫が行っていま
すから、名義財産に当たり、夫の相続財産と判断す
べきです。

しかしながら、そうなると配偶者の税額軽減で相続
税は取れませんので、税務署は税金取るためだけに、
配偶者に生前夫がお金を贈与したとして、贈与税を
課税したのです。

建前としては、夫の名義預金としか判断できないの
にもかかわらず、です。

幸いなことに、裁決で国税当局の処分は取り消され
ましたが、国税は税金取れるようにしか事実関係を
判断しないことが分かります。

このため、税務調査リスクをガードする契約書など
を作ってもそれだけでは意味はありません。

あくまでも、自分が税務署だったらどのような話を
作れば税金を取れるかを考えた上で、それに対する
対策をあらかじめ考えておかなければならないのです。