短期前払費用と特別損失経理
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第四百三十二回目。
テーマは、
「短期前払費用と特別損失経理」
です。
有効な節税として有名な短期前払費用については、
それが「重要」な費用であるかが問題になります。
短期前払費用は、年払いの保険料や賃料について、
支払ったタイミングで向こう一年分まで経費にでき
るという制度です。
これらの費用は企業において重要ではないため簡便
に処理できる、という考え方で認められています。
法人税は事業年度毎に課税されますので、翌年度分
は経費になりませんが、重要な費用ではないので区
分せず、支払った金額の全額を経費にできる、とい
う考えが短期前払費用の背景にはあります。
こういう訳で、「重要」と判断される費用はそもそも
短期前払費用の特例を受けられないのですが、判例
などにおいては、その基準として、短期前払費用と
した費用の金額の多寡や売上に対する割合などで判
断されることが通例です。
このため、金額的にどの程度までなら短期前払費用
として認められるのか、よく質問を受けますが、確
実な基準はなくグレーな話ですので断定はできず、
ケースバイケースとしか言いようがありません。
なお、先日の裁決例では、2.5億円程度で売上に
対する割合が約11%の賃料を短期前払費用とした
処理について、巨額でありかつ構成割合も大きいこ
とから、重要性が高く短期前払費用にならないとさ
れました。
売上規模などは会社によっても違いますが、一つの
基準として、対売上比で10%を超えるような場合
は注意すべきかもしれません。
ただし、繰り返しですが絶対的な基準はありません
ので、対応策としては金額的に大きいと思われる短
期前払費用については、最低限押さえておくべきポ
イントを押さえた上で、最終的には国税当局と税務
調査の交渉で落とす、という方向性となります。
ここでいう、押さえておくべきポイントですが、一
つ目は経理方法です。先の裁決例において指摘され
たことですが、短期前払費用を「特別損失」として
経理したことが問題になっています。
「特別損失」は役員退職金や災害の損失など、臨時
的・突発的な損失を計上する科目でイレギュラーな
ものであり、かつ金額的にも巨額になることが多い
です。
このような科目に計上するとなると、イレギュラー
という意味で重要性があると判断できますから、短
期前払費用とすることは難しいとされています。
このため、短期前払費用を適用する場合には、勘定
科目等の経理処理にも注意する必要があります。
次に、この事例の賃料は関連会社に対するものであ
ったため、簡単に年払いに変更でき、変更してすぐ
に短期前払費用の特例を適用した、という点も重要
です。
この点、本裁決においては「短期前払費用の適用要
件に租税回避目的は関係ない」といった指摘もなさ
れていますが、関連会社を利用し、かつ年払いに変
更するというのはさすがにあからさまな節税で目立
ちますから、慎重に対応すべきと言えます。