消費税の納税義務と更正の請求
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第四百二十八回目。
テーマは、
「消費税の納税義務と更正の請求」
です。
申告した税額が誤っており、納めすぎた税金を返し
てもらう場合、更正の請求という手続きを取る必要
があります。
更正の請求の大前提として、
①法の適用誤りがある
②計算誤りがある
そのいずれかが必要とされています。
この①と②の要件が重要になるのは、税務上の計算
方法に選択が認められる場合です。
例えば、AとBという二つの方法を選択して税金の
計算ができる場合、Aを選択した後、Bで計算した
方が税金が小さい、というケースは更正の請求がで
きません。
法律上Aを選択できますから法の適用誤りもないで
すし、Aの計算方法で計算している以上、計算誤り
もないからです。
このように、選択が認められるケースは更正の請求
が制限される訳で、実務上よく問題になります。
先日問題になったのは、消費税の納税義務に関する
事例です。
消費税の納税義務は原則として前々期の売上が1千
万円以上か否かで判断します。
ただし、例外として前々期が1千万未満でも、前期
の前半(上期)の売上が1千万以上であれば、消費
税の納税義務があるとされています。
しかし、これにも特例があって、上期の1千万の判
断に売上に代えて、給与支払額で判断することもで
きるとされています。
結果として、売上と給与が共に1千万円以上である
場合は当然納税義務がありますが、売上が1千万未
満で給与が1千万円以上なら給与を選択し、売上が
1千万円以上で給与が1千万未満なら売上を選択す
ることで納税義務がある、とすることもできます。
こういう訳で、上期の判断には選択が絡みますから、
売上と給与、どちらか1千万円以上の方を選んで納
税義務があるとした後に、更正の請求で1千万未満
のものを選んで納税義務がないため消費税を返して
欲しい、といったことはできません。
実際のところ、この事例でも同様の結論が出ていま
すから、注意が必要です。
しかし、自分で申し上げて何ですが実はそれほど単
純な話ではないのです。
この法律の趣旨を読むと、仕組みとしては売上と給
与のどちらか一方を選択して納税義務があるかどう
かを選択できる、というものを予定したものではあ
りません。
それは、上期の売上と給与の両方が1千万円以上の
場合に限って納税義務があるいう仕組みを予定した
ものなのです。
実際のところ、選択を可能にするなら、後日のトラ
ブル防止のため何らかの手続きが必要とされること
が多いのが通例です。
しかし、この規定については選択と言いながら特に
税務署に手続きも不要とされています。
加えて、一般的に納税義務はない方が有利ですから、
慎重を期すために売上と給与の両方が1千万円以上
で判断するのが妥当に思います。
こういう訳で、審判所も選択と言っていますが、趣
旨としては選択ではなく一択ですので、片方が1千
万円未満の場合には、更正の請求の対象になり得る
と考えています。